雇い止めってなんですか?

雇い止めというのは、契約期間が終わったときに、更新されずに退職になる事をいいます。

ですから、契約社員とか、期間社員などと呼ばれている、「契約期間の定めのある雇用契約」を結んで働いている人に雇い止めということが起きます。反対に、期間の定めのない雇用契約で働いている人(通常は正社員と呼ばれる人です)には、雇い止めということはありません。

言葉の意味はこのように簡単ですが、働いている側からすると実は困ったことが起きます。

たとえば、半年契約のパートで働いている人が、何回も契約を更新して、長期間継続して勤めていたとします。
契約の更新の手続きも、最初の更新のときだけ新しい契約書にハンコを押しただけで、その後は、何もなくそのまま、2年~3年過ぎたら、誰でもふつうは、その後もずっとここで働けると思いますよね?

ところが、ある日、突然、会社から「契約は更新しないので、今の契約が終わる今月末で辞めてもらいます。」といわれたらどうでしょうか?もっとひどいときには、「今日で契約は終わりです。明日からもう来なくてよいから。」と言われることさえあるそうです。
こんなときは、まずびっくりするのと、なぜいきなりクビになるのかという怒りで、パニックになってしまいますよね。
それに、次の仕事を探すといってもすぐには無理でしょうし、月給が入ってこなくなれば生活に困ってしまいます。

このようなことが平然と行われてよいのでしょうか?

会社は解雇ではなく、期間満了による退職だといいますので、これに従うしかないのでしょうか?

法律ではどうなっているかというと、「有期労働契約の締結、更新および雇い止めに関する基準」があります。
ここでは、まず、会社は、期間契約を結んで人を雇うときには、労働者に対して、更新があるかないかについて、はっきりと伝えなければいけないと決めています。そして、契約を更新する・しないときはどのような場合かも伝えなければなりません。

また、雇い止めする場合で、その労働者の雇用契約が3回以上更新された場合か、1年以上継続して働いた場合は、少なくとも30日前までに、契約を更新しなことを伝えなければならない(予告と言います)と決められています。
ですから、「今日で終わりです。」が通らないケースもあるわけです。

また、雇い止めを予告されたら、労働者は、その理由を会社に書面で出すように請求できます。つまり、法律によって、なぜ会社が契約を更新しないのか、の理由をはっきりと書いた書類を出すことを要求できるのです。
なぜこのようなことができるかと言うと、長期間にわたって、契約を更新し続けて働いた人に対しては、単純に契約期間が終わったからやめてくださいというのはあまりにも酷なので、会社が雇い止めをしなければならないようなやむをえない事情がなければならないはずだから、その理由をはっきりとしてくださいという権利が労働者にはあるということだからです。

その理由に納得がいかないとか、社会通念上も正当だと思えないときは、直接交渉のほかに、労働紛争解決機関に申し出て解決を橋渡しをしてもらうこともできます。たとえば、労働局のあっせん、裁判所による労働審判、訴訟などがあります。もちろん、労働組合に支援を求めたり、弁護士を通じて交渉で決着を図ることも解決手段の一つです。

雇い止めは解雇と同様に、法律で禁止しているわけではないので、雇い止めに納得がいかないというときは、このように少し複雑で時間と手間のかかる手続きが必要になります。これらの解決手段によって、どのように解決したいかについても相談できます。たとえば、あくまでも復職をしたいのか、金銭解決によって退職は受け入れるのか、などです。どの方法がよいかは相手の会社の様子にもよりますし、雇い止めになった人の気持ちや事情によっても違いますから、よく考えて、紛争解決機関の方とも相談してください。

ところで、契約期間の途中で「辞めてください。」とか「解雇だ。」と言われた時はどうなのでしょうか?
原則として、期間契約の場合には途中で契約を打ち切る(解除する)ことはできません。これは会社も労働者も同じです。
それでも、どうしても途中解約しなければならないことも出てくることが予想されるので、労働者保護の立場から、労働契約法第17条では、会社は、やむをえない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で、労働者を解雇することができないと決めています。

この場合、やむを得ない事由がある事を証明しなければならないのは会社の方なので、途中解雇された労働者は法律違反であることを申し立てればよいことになっています。