2019年9月21日

最低賃金が10月から上ります

最低賃金という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 日本では、都道府県別に1時間あたりの最低賃金が決まっています。 会社は、社員に対して、健常者であれば、例外なく、最低賃金以上の給料を払わなければ法律違反となります。社員とは、アルバイトでも、パートタイマーでも、嘱託社員でも呼び名には全く関係ありません。 または、採用直後の研修中だから最低賃金以下の給料でも良いとか、経験がないから、はじめの半年は最低賃金以下の給料しか払わないといったことも全部法律違反です。 さらに、固定残業代、通勤手当や精勤手当、皆勤手当その他の手当は最低賃金を計算するときには含めてはいけません。 そのようなわけで、東京では令和元年10月以降に働いた分から1時間あたり1,013円が最低賃金と決まりました。各地の最低賃金はこのサイトに一覧表を載せましたのでご覧ください。ついに東京と神奈川では1,000円を超えました。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 7:15 PM
2019年2月16日

今年4月から始まる年休の5日取得

働き方改革法制が4月1日から実施されます。会社の規模に関係なく、一斉にスタートするのが「年次有給休暇5日の確実な取得」です。ここからは年休と書きます。

4月1日以降、会社は、対象の社員に対して、年休の内5日は取らせなければならないという義務が発生するのです。「うちは中小企業だから、対象外だ」ということはありません。すべての会社が4月1日から対象です。罰則まであって、会社がこの義務に違反すると30万円以下の罰金です。

そうまでして、法律で年休の取得を会社に義務付けるのは、いろいろな理由があると思いますが、年休を取ることへの気兼ねやためらいなく、リフレッシュを兼ねて年休を取りましょうということもあるのです。

では対象となる社員とはどのような人か見ていきましょう。

まず、1年に10日以上年休を付与される人と決まっています。この中には管理職やパートタイマーも含まれます。

つまり、週5日勤務の人は勤続年数に関係なく、勤続年数が3年半以上で週4日勤務の人と5年半以上勤務している週3日勤務の人です。年休の比例付与についてはこちらの厚生労働省のサイトでご確認ください。

使わなかった年休を翌年度に繰り越して総日数が10日以上になった人でも週2日勤務の人は対象になりません。週2日勤務の人は年休の付与日数7日が限度だからです。新年度になって新たにもらえる年休が10日以上ないと対象になりませんので、注意してください。

また年休付与の条件は前年の出勤率が8割以上となっているので、欠勤があまり多いと、翌年は年休ゼロとなりますのでこちらも注意が必要です。

まず、5日の年休を1年以内に取れるよう取得日を事前に決めます。上司や同僚と協議して決めてもよいですし、会社がブリッジホリデーとして連休にして、年休を取得するという方法もあります。今年のゴールデンウィークに準じて来年も同様にするということでもよいかもしれません。

ここで疑問となるのが、半休や時間休暇はどうなのかといいうことですが、半休はよいですが時間休暇は5日取得に算入できないことになっています。また今まであった夏休みや年末年始の休業を5日減らしたりやめたりして、年休5日取得に振り替えるということは、労働条件の不利益変更となります(法律でダメとは書いていないが、法律の趣旨に反するもので望ましくないとされています)。また、法定外休暇(夏休みやリフレッシュ休暇など)を取っても年休5日取得に算入できません。

この5日取得とは別に計画付与とか計画年休といって計画的に年休をとるように会社が出勤日を調整している場合があります。こちらの方法で5日以上年休が取れるようになっていれば、年休5日取得は必要ありません。

毎日仕事が忙しくて年休なんてとても取れないという方や、そんなの取ったらあとがかえって大変という方も多いと思います。でも、上司が年休取得にいい顔しないという職場だったら、これからは気兼ねしないで休暇取るようにしてください。思いっきり朝寝坊してもいいし、行ってみたかったところに出かけてみるのもリフレッシュになります。

コラム — 5:03 PM
2017年2月16日

プレミアムフライデーは早帰り、でも給料カット?

 2月24日から、プレミアムフライデーが導入されるからと、経済産業省やデパートや飲食店、ホテルなどが盛り上がっているようです。

 プレミアムフライデーは毎月の最後の金曜日は早く仕事を切り上げて、日常よりも少し豊かな時間を過ごしましょう。ライフスタイルの変革を目指しましょうという目的のようです。
月末の金曜は,ちょっと豊かに」がキャッチフレーズです。

 たまには早く帰ってリフレッシュしようという考え方は大変良いことだと思います。会社が導入に積極的なら是非参加して下さい。外国ではインターバル制などといって、退社してから次の日の出社時刻は10~12時間後とするような取り組みも行われています。たとえば、インターバル12時間制なら、深夜11時半に会社を出たら、翌朝は午前11時半に出社すれば遅刻にならないということです。日本政府も制度の導入を検討していますが、その前に、プレミアムフライデーを定着させておこうということなのかも知れません。でも来月の3月31日(金曜日)は無理かもです。たいていの会社は年度末・期末ですから、早帰りなんてあり得ないといわれてしまいますね。まあ、臨機応変に対応ということですね。

 ところで、早帰りはいいけど、給料カットされるならごめんだ、という声が聞こえてきています。 (続きを読む…)
2017年2月4日

コンビニバイト,で休んだらペナルティー

 コンビニ店でアルバイトをしていた高校生が、病気のため休んだら、代わりのバイトを用意できなかったことでペナルティーを取られたという事件がかなり話題となっています(H29/2月)。

 この高校生の親が店のオーナーに事情を確認したら、ウチではそうしてますと言ったとかで、さらに火に油を注ぐ結果となっています。このコンビニの本部はさすがにまずいと思ったのか、労基法違反を堂々と宣言してしまったフランチャイズのオーナーへの対応として、法律違反を認め、事態の収拾を図っているようです。日本で一番大きい、他社のお手本となるべきコンビニチェーンですから、コンプライアンスは徹底してほしいです。 (続きを読む…)
2016年9月16日

東芝うつ病事件が確定しました

 仕事が原因でうつ病になり、会社の安全配慮義務違反を争った事件(通称「東芝うつ病事件」)の判決が確定しました。最高裁まで行き、差し戻しの高裁判決が8月31日に出て、労働者側のほぼ全面勝利でしたが、その後、会社が上告しなかったので、この高裁判決が確定したことになります。

 うつ病と闘いながら12年もの期間、裁判を続けてきた労働者(重光さん)には本当に良かったとともにお疲れ様でしたと申し上げたいです。なんと、ご本人はブログで職場復帰を目指すと言っているのです。私はその決意に敬意を表したいですし、微力ながら応援したいと思います。。

私もこの事件には大変関心があり、地裁判決から最高裁判決まで読んで、レポートをしたことがあります。そもそもこの事件のきっかけは、ボタンの掛け違いから始まったと思っています。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 4:14 PM
2016年9月4日

未払い残業代の請求には証拠が必要

平成28年3月に東京地裁で出た判決から、未払い残業代の請求に必要な証拠について考えてみます。

 この裁判は、そのほかにも賃金減額の有効性を争ったり、パワハラ被害について損害賠償したりと、日本で頻繁に起きている職場のトラブルが何種類も出てきます。
 このうち、賃金減額については別のブログで取り上げてみようと思います。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 4:24 PM
2016年8月29日

減給には就業規則の規定が必要

平成28年3月に東京地裁で出た判決から、給与減額の妥当性について考えてみます。

 この裁判は、そのほかにもサービス残業代を請求したり、パワハラ被害について損害賠償したりと、日本で頻繁に起きている職場のトラブルが何種類も出てきます。
このうち、サービス残業代の請求については別のブログで取り上げます。

 この裁判の判決文は最高裁判所のサイトには載っていないのですが、私は神奈川県立図書館で利用できる、第一法規法情報総合データベース(D-1Law)で見つけて読みました。この判例検索システムは、よく利用させてもらっています。

 この裁判で、原告(退職した労働者)は、8回も給与減額の処分を受けていて、部長代理に昇格したときに上がった月給58万円から最終的に35万円まで下げられています。被告(会社)の言い分は、懲戒処分として行われたもので、就業規則に基づいて行われたものだ、ということです。
ちなみにこの原告社員は昭和52年4月に入社し、勤続30年目の平成19年1月頃技術部の部長代理に昇格しています。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 3:20 PM
2016年8月8日

突っ込みどころ満載の労災裁判-6

 チョコレートの販売会社で直販店の店舗管理、在庫管理などを担当していた若手社員が、過重労働によりうつ病にかかり自殺してしまったのですが、死亡直前2ヵ月の残業時間は172時間と186時間でした。この痛ましい事件に対してご両親が原告となって会社や社長らに損害賠償を請求する訴えを起こしました。その判決文を読んで、被告会社が主張(反論)した内容について突っ込みを入れてきましたが、この裁判の結果をお知らせしていませんでした。ただし、あくまでも第1審(東京地裁)の判決です。

 結果は原告の勝訴で、この判決で確定しています。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 10:41 AM
2016年8月7日

突っ込みどころ満載の労災裁判-5

 チョコレートの販売会社で直販店の店舗管理、在庫管理などを担当していた若手社員が、過重労働によりうつ病にかかり自殺してしまったのですが、死亡直前2ヵ月の残業時間は172時間と186時間でした。この痛ましい事件に対してご両親が原告となって会社や社長らに損害賠償を請求する訴えを起こしました。その判決文を読んで、被告会社が主張(反論)した内容について突っ込みを入れてきましたが、今回が最終回で、過失相殺のことについてです。

 それでは見ていきましょう。

  1.  「D(死亡した社員)のミスについては、被害者の過失として斟酌されるべきである。」(被告らの主張)ウ

     この裁判は、原告が被告らに、損害を金銭によって賠償しろと訴えている事件なので、被告は、賠償金額を少しでも減らしたいと(できれば全く払わずに済ませたい)いろいろと主張(反論)しているわけです。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 6:39 PM
2016年8月5日

突っ込みどころ満載の労災裁判-4

チョコレート製造販売会社で直販店の店舗管理、在庫管理などを担当していた若手社員が、過重労働によりうつ病にかかり平成23年12月28日に自殺してしまったことについて、ご両親が原告となって会社の責任を争った裁判で、被告(会社)がどのように反論していたかについて見ていきたいと思います。
前回に引き続いてさらに被告の主張の続きを見たいと思います。前回同様、ページ数は、判決文PDFのページ番号です。

  1. 「コールセンター時代の残業は、Dが業務上の必要がないのに自らの意思で担当業務とは別の業務を手伝っていたので、被告Cは残業を抑制するよう注意指導していた。」9ページ目下段イ-(ウ

     これも会社がよく使う弁明の手法です。つまり、社員が本来ならやらなくてよい仕事を勝手にしていたのだから、これは仕事ではないのでその時間に対する賃金(通常は残業代)は払わない、というものです。確かに、そう言われればそのとおりかもしれないと思ってしまいますが、そんなに簡単なことではありません。
     時代遅れの考え方だとご指摘を受けそうですが、労働基準法の中では、働くということは会社の指揮命令を受けてその仕事をこなすことと考えられています。これは、昔の工場の生産ラインで働く人を想定しているといわれていて、決められた仕事を決められた時間こなすことで給料がもらえるということでした。残業も、会社が「今日は1時間残業」と命令してそれにその生産ラインの全員が従って残業したわけです。私も今から40年ほど前、夏休みに電気製品の生産工場でバイトしたことがありますが、残業は上司が決めていました。そのときは、私にも「今日は1時間残ってくれ。いいね?」といわれたのを思い出しました。労基法の中では労働に対する給料の支払い基準は労働時間が基本となっているのです。これが一番客観的で不公平がないからです。

     そうすると、「会社は残業を命令していない。勝手に残っていたのだから残業代の支払い義務はない。」とか、この被告会社のように、「業務上の必要がないのに自らの意思で別の仕事をしていた」という言い分が出てくるわけです。 (続きを読む…)
コラム — タグ: — 1:54 PM
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