同月内の入社・退職で厚生年金保険料が戻ってくるケース

  会社に就職しても、いろいろな事情でその月内に辞めたというケースはたくさんあると思います(同月得喪と呼んだりしています)。このとき社会保険に加入していると、たとえ月末前に退職しても1か月分の社会保険料を払わなくてはなりません。通常は給料から天引きされますので、いやおうなく納付することになります。
  
 これは法律でそのように決めているからで、ここはどうしようもないというのが現状ですが、ある条件を満たすと、天引きされた(納付した)厚生年金の保険料が1か月分だけは戻ってくるということがあります。他方、健康保険料や介護保険料はどのような場合でも戻ってきません。 日本年金機構のホームページにも簡単ですが説明があります。   会社に就職しても、いろいろな事情でその月内に辞めたというケースはたくさんあると思います(同月得喪と呼んだりしています)。このとき社会保険に加入していると、たとえ月末前に退職しても1か月分の社会保険料を払わなくてはなりません。通常は給料から天引きされますので、いやおうなく納付することになります。

 こんなケースで考えて見ましょう。

 Aさんは、X社に12月1日付で正社員として入社しました。会社はすぐに社会保険と雇用保険加入の手続きをとりましたので、健康保険証も程なく届きました。
  ところが、3週間ほど勤務したところで、Aさんにその会社を辞めなければならない事情が急に発生しました。そこで会社に相談したところ、12月25日に退職することで話がまとまりました。
 Aさんは、翌日の26日に、自分が住んでいる市役所に行って国民年金と国民健康保険の加入手続きを済ませました。

 この会社は、毎月25日が給料日なので、会社は翌1月25日に、Aさんが指定した銀行口座に日割りで18日分の12月の給料を振り込みました。当然、社会保険料や、所得税を天引き後の金額でした。

  しばらくすると、会社に年金機構からお知らせが来ました。退職したAさんの厚生年金保険料を会社負担分も含めて会社に払い戻すので、手続きをしてくださいという内容でした。 会社は、払い戻しを選択したので、後日振込みがありました。 還付された厚生年金の保険料は社員負担分(給料から天引きされた額)と会社負担の合計額でしたから、会社はAさんに社員負担分を返金しました。

  という、ストーリーですが、大事なポイントを確認しておきましょう。
1. 入社した月に厚生年金保険に加入(資格取得)している。  
2. その月の月末前日までに退職(資格喪失)している。 
3. その月の給料から厚生年金保険料が天引きされ、日本年金機構に納付されている。  
4. その月の月末までに国民年金に切り替えている、または転職先で再度、厚生年金の資格取得をしている。
5. 日本年金機構からは、退職者にではなく、会社に社員負担分も含め厚生年金保険料の全額が返金される。

 1~5までのうち、5は会社に返金手続きをしてもらう必要があるので、前もって、注意喚起と返金の依頼をしておく方が確実です。

 この払い戻しの仕組みは平成27年から導入されたので、まだ知らない会社がたくさんあると思うので、こうしたケースがあっても、保険料払い戻しのお知らせを無視してしまったり、振込みによる還付ではなく、よくわからないまま翌月の社会保険料との相殺を選択してしまったりすることも十分あると思うので、注意が必要です。 なお、退職理由は会社都合でも自己都合でもどちらでも払い戻しされます。

 保険料の払い戻しをしてもらうために、もうひとつ大事なことは退職日を月末の日としないことです。たとえば12月なら31日、6月なら30日というように末日に退職すると、その月の社会保険料は1か月分払わなくてはなりませんし、戻ってもきません。これは、末日退職の場合の資格喪失日は翌月1日になるからです。末日退職はその日まで社員(社会保険に加入していた)だということなのです。一番わかりやすいのは、健康保険証は月末日(の午後11時59分まで)まで使えるということです。

 社会保険料納付の大原則は毎月末日にどの制度に加入していたかで払う保険料が決まります。したがって月末に退職するとその月は社会保険に加入していたことになり、保険料が発生するという仕組みになっているのです。

 逆に言えば、保険料納付月数を国民年金としての1か月よりも厚生年金としての1か月のほうを選びたいというときは、会社と相談の上、月末日で退職とすることで実現できます。 実は将来もらえる年金額を考えた場合には、厚生年金としての1か月のほうが、国民年金としての1か月よりも多く支給されるからです。ただし、これはあくまでも年金を多くもらうということだけを考えた場合の対応ですから、退職の際にはさまざまな事情があれるとおもいますので、それも考慮の上で最善の対応をとってください。

 そして国民年金に切り替えたときは保険料の納付または免除申請を忘れずに行い未納期間が発生しないようにしてください。

 もう一度おさらいです。 社会保険の同月得喪の場合には、厚生年金保険料が戻ってくる場合があるので、事前に会社に返金の依頼をしておくことが必要。 ということです。