あっせんでは、事実の確認をしないと言われましたが、それでは、会社の非を確認しないままどうやって和解したら良いのですか? 、というご質問をいただきました。 実際にあっせんの日に、あっせん委員(和解の仲立ちをしてくれる労働法の専門家)からそのようなことを言われることがあります。これは何のことを言っているかというと、社員と会社がお互いに主張しているような事実は、あったのか、なかったかとか、とか、どちらが正しいのかとか、そういったことについてはあっせんの場では判断しません、ということです。もちろんあっせん申立書や反論書に書かれていることはあっせん委員は十分読み込んで紛争の状況を熟知していますが、それに対してどちらの言い分が正しいといった判断はしないということです。 いろいろあったのでしょうが、お互いに譲るところは譲って、和解したらどうですか、という場を作ってくれるのがあっせんですので、勝った負けたとか、白黒決着つけるということを目的としているわけではありません。 例えば、解雇は無効だと社員が主張して、会社がいや解雇は有効だと反論して、お互いの言い分がぶつかっている時に、その解雇が有効なのか無効なのかを判定してもらうのではなく、その紛争状態をどう解決するかを話し合って決めるのがあっせんです。 解決の選択肢はたくさんありますので、両方が受け入れられる方法があればそれで和解しましょうということになります。 先ほどの解雇のケースで言えば、一例として、会社は解雇を取り下げる代わりに会社都合退職でも良いから会社を辞めてもらいたい。辞めてくれるなら、解決金として給料の3ヵ月分払うという条件を出してくるかもしれません。社員の方も、もうこんな会社にはいたくないから辞めることについては合意するが、再就職までの生活のこともあるので、3ヵ月分では足りない。永年にわたって勤めてきたのだし、世間相場も考えて、せめて半年分は出してくれなければ困る。といったことがあっせん委員のアドバイスなども交えて話し合われたとします。 こうなると、もはや、解雇が無効なのか有効なのかということは、大事なことではなくなっていて、自主退職で両方が合意し、あとは解決金をいくらにするかということが焦点になってきます。 間を取って4.5ヵ月、いや端数を丸めて◯◯万円、といった応酬があって、結局5ヵ月で両方がOKしたなら、これで和解成立です。 あとは合意書を作成して両者が署名押印して解決金が払われれば、もうこの紛争は解決しました。これから先は退職した社員も再就職活動に専念できるでしょう。 この記事を読まれた方の中には、これでは根本的な解決になっていない、とか、このような曖昧な決着では消化不良だ、あるいは、解雇は無効だという判定をもらうべきだ、などと思われる方もいらっしゃるかもしれません。そうした要望には訴訟で争って自己の主張を勝ち取るしかありません(勝てない可能性もあります)。 労働関係の紛争解決にはあっせん、労働審判、訴訟などの様々なメニューが有りますので、ご自身の目的に合わせて選択されるのが良いと思います。弊事務所では、ご相談内容やご本人のご希望もうかがった上で、どの紛争解決方法が良いかアドバイスもできます。社労士だから、あっせんしか勧めない、ということはいたしませんので安心してご相談ください。