あっせん制度にも、限界があります。(デメリットというのとは違います)
まず、あっせんを申し立てられた側にとって、あっせんへの参加は強制ではないということです。
例えば、労働者側からあっせんを申し立てて、それが紛争調整委員会に受理されても、相手方(この場合は会社)は、
そのあっせんへの参加、不参加の選択ができるということです。裁判と違い、強制力がありません。
相手方が不参加を表明すると、あっせんはそこで終了してしまいます。
もっとも、相手方が出てこなければ、別の方法がいろいろあります。例えば労働審判や、簡易裁判所への申立などです。
そうしたケースはたくさんあります。私も、解雇されてしまった社員を支援して、あっせんを申し立てましたが、会社が不参加だったので、労働審判に申し立てたことがあります。このケースは労働審判で決着しました。
相手方にとっても、あっせんに不参加の自由はありますが、場合によっては、あっせんよりもはるかに、時間もお金も、エネルギーも使う訴訟や労働審判を起こされるリスクがありますから、「当方は絶対間違っていない」という絶対の自信がある場合でない限り、
あっせんに参加して、紛争解決の糸口を探る方が得策だと思います。
2つめの限界は、あっせんが開かれてあっせん案が出ても、それに応じるかどうかは、申し立てた側も、申し立てられた側も自由だということです。
つまり、せっかくあっせんに両方が出てきても、解決できずに終了してしまうこともあるということです。
あっせんは裁判の判決、労働審判の審判のような明確な決定が出るわけではなく、あくまでも問題解決のための合意点を探ることを前提としていますから、
双方合意に至らないということは十分に想定できます。
しかしながら、紛争解決の合意に至らなかったときは、上で述べたように、訴訟リスクが残ります。
申し立てる側も改めて訴訟を起こすことは時間的にも金銭的にも大きな負担となります。
ですから、統計上も約35%があっせんで解決した、となっています。(H21年度厚労省集計)
3つめの限界は、あっせんによって和解が成立しても、拘束力が弱いということです。
裁判上の判決や和解と違い、和解によって合意したことが実行されなくても、強制執行などはできません。
しかしながら、一般的にも、お互いに話し合いによって和解が成立し、両者が合意したことは実行される事が多いです。
このように、いくつかの限界がありますが、こうしたことを知った上で、申立側としてはいかに相手に出てきてもらうかも考えて、準備をしましょう。
あっせん申立を受けた側としても、短期間で、紛争解決をした方がよい場合もありますから、申立書を十分に検討して、参加不参加を決定していただきたいと思います。
なお、あっせんは労働者からも会社からも、申立できます。