ノーワークノーペイとは何のことですか?

労務トラブルQ&A,給与問題 — タグ: — 2016年4月1日12:36 PM
A. ノーワークノーペイの原則のことですね。

ノーワーク、つまり働かなければ、
ノーペイ、給料は払わない。

という原則です。たとえば、1日欠勤したら、一日分の給料を引かれてしまいますが、これは違法ではありません。働かなかった時間や日の分は給料を払いませんというノーワークノーペイの原則があるからです。

会社の就業規則か、給与規定をよく見ると、遅刻、早退や私用外出したときは給料を1時間単位で控除(カットすること)するとか、無給の特別休暇制度(欠勤扱いにはならないが、有給休暇ではない)があるといったことが書かれているかと思います。これはみんな、働いていない時間や日については給料は払いませんというノーワークノーペイの原則(労基法24条)が根拠になっています。

労働基準法24条は、「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を払わなければならない。」と定めていますが、全額とは働いた分について全額を払えと命令していることなので、裏返せば、働かなかった部分の給料は払わなくてよいということになります。

時給制や日給制の人なら元々そのような給料計算方法になっているので、当たり前のことかもしれませんが、月給制の人には基本給が減らされてしまうという事態が起きたら驚くかもしれません。
ただし、日割りや時間割で計算された欠勤控除以上の金額が引かれてしまっているときは、ペナルティー(制裁)も含まれているので注意が必要です。ペナルティーは上限が決まっているので、それ以上は控除してはいけないことになっているからです。これは少し複雑なので、こちらのページでご説明していますのでご覧下さい

さてノーワークノーペイにも例外があります。
こちらの方が大切なことなので覚えておいてください。

1番目は有給休暇です。年次有給休暇とか、慶弔休暇のような特別休暇(有給)は、会社を休んで働かない日や時間があっても給料を引かれないですね。最近は半日休暇や、時間単位の有休の制度がある会社も増えてきたので、活用してください。

もう一つの例外は、休業手当です。

会社を休まなければならなかったのは会社のせいで、自分のせいではないという時の所得保障のことです。これは民法536条2項の危険負担という考え方によるものなのですが、たとえば、会社が経営上の理由から工場や店を1ヵ月閉鎖したようなとき、社員はそこで働くことができません。ノーワークノーペイの原則を当てはめたらこの1ヵ月分の給料がもらえませんね。そこで、休業の理由が会社の責任だ(使用者の責に帰すべき事由がある)という場合には、社員は休業期間中の給料を請求できるというわけです。ただしこの民法の規定は会社と社員の合意(特約)により排除してしまうことができるので、就業規則でそのように定めている場合があります。

そうすると、社員としてみれば会社が長期間休業してしまうと、給料が入りませんから、生活できなくなってしまいます。そこで、労働基準法26条で、会社のせいで休業した場合には、会社に対して、休業した日について平均賃金1日分の60%以上を払うように命令しています。これは強制ですので、26条違反には罰則があります。もし、裁判になって、会社が負ければ、最大で休業手当と同額の付加金の支払い(倍返し)を命じられることがありますから、社員の権利はよく守られていると思います。よく休業補償と混同しがちですが、こちらは休業手当ですので就業規則の項目を探すときもご注意ください。

休業手当は就業規則にたとえ書かれていなかったとしても、労基法による強行規定ですので、26条を根拠に会社に請求できます。平均賃金の60%では低い思われるかもしれませんが、民法536条2項と違って支給が保障されているので、権利は保障されているわけですから、ある程度は妥協せざるを得ないかもしれません。もっとも条文上は「100分の60以上の手当を払わなければならない。」となっているので、就業規則で何も決めていなければ100%請求することも可能です。なお、この休業手当は給与所得として通常の給料と同様に課税対象となります。