突っ込みどころ満載の労災裁判-6

コラム — タグ: — 2016年8月8日10:41 AM
 チョコレートの販売会社で直販店の店舗管理、在庫管理などを担当していた若手社員が、過重労働によりうつ病にかかり自殺してしまったのですが、死亡直前2ヵ月の残業時間は172時間と186時間でした。この痛ましい事件に対してご両親が原告となって会社や社長らに損害賠償を請求する訴えを起こしました。その判決文を読んで、被告会社が主張(反論)した内容について突っ込みを入れてきましたが、この裁判の結果をお知らせしていませんでした。ただし、あくまでも第1審(東京地裁)の判決です。

 結果は原告の勝訴で、この判決で確定しています。

 最高裁判所のサイトから判決文が削除されているようです。ほかの判例検索サービス(LexisやWestlawやD-1)には掲載があるかもしれません(H29/11/18現在 Westlawにはありました)。
検索する場合には下記の裁判データをキーワードにすると見つけやすいと思います。
裁判年月日 平成28年3月16日 裁判所名 東京地方裁判所 裁判区分 判決
事件番号 平25(ワ)1985号・平26(ワ)22614号
事件名 損害賠償請求事件
上訴等 確定

また、こちらのサイトにも全文が載っています。  裁判の結果は判決文の先頭にある主文に出ています。
原告Aは父親で Bは母親です。どちららも請求額の半分(以上)が認められました。

 具体的には、主文の1.で、「被告らは、原告Aに対し、連帯して、2,739万9,620円及びこれに対する平成23年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を払え。」と書かれています。2.では被告らは、原告Bに対し、連帯して、2,677万7,500円(以下1.と同様)を払えとなっています。内訳は、亡くなった社員Dが生きていれば稼げたと思われる逸失利益、慰謝料、葬儀費用、弁護士費用等の合計金額となっています。また、労災保険からすでに給付済みの葬祭料や遺族補償一時金は、逸失利益や葬祭費用の一部として控除されています。 これに加えて、未払い残業代(請求額は約282万円)が、原告AとBにそれぞれ約141万円が認められました。(ほぼ全額です)

 判決文をご覧になっている方はもう一つ残業代と同額の支払いがあることに気がつかれたと思います。これが付加金というもので、根拠は、労働基準法144条の付加金の支払という条文です。端的に言ってしまえば、残業代、休業手当、解雇予告手当、有給休暇の賃金を払わなかった会社に対して、ペナルティとして未払い額と同額の付加金を払わなければならないということです。ただし、訴訟で請求してなおかつ裁判所が認める事が必要なので、サービス残業代を裁判で請求する場合には、付加金の請求を忘れないようにしましょう。付加金はペナルティーなので、裁判所も必ず認めるというわけではなく、今回の裁判以外では、一部認めたり全く認めなかったりしています。

 こうした金額の計算方法や詳細な内訳は判決文の中で詳しく書かれています。もし興味があったらここだけでも見て下さい。