2016年5月23日

ウチはみなし労働時間制

みなし

「ウチの会社はみなし労働時間制だから残業代はないよ」
といわれて、そうなのか、と納得させられてしまった、といったことありませんでしたか?

「みなし」が何を指すのかにもよりますが、もしこれが「事業場外労働に関するみなし労働時間制」のことだとしたら、自分はこれに当てはまるのかよく確認する必要があります。

実は労働基準法38条の2で、社外(事業場外のこと)で働いていて、上司や会社が労働時間を正確にわからないという場合には、一定時間働いたことにしても良いと決めています。ただし、これは昔の通信環境や労働時間管理での働き方を想定していますから、現在ではこの説明だけでは不十分です。
今から30年ほど前までは、安価で手軽に使える携帯電話もなく、外出した社員と連絡を取りたいときにはポケベル(知らない方も多いでしょうが、会社に電話をするように知らせるショートメールのようなもの)程度しかなかった時代には、社員が、外出して会社に戻らずに帰宅してしまうと何時まで働いたのか確認が取れないということがありました。自己申告をそのまま鵜呑みにするわけにも行かなかったようです。
特に、外回りの営業職や修理補修担当の方々は、朝会社に来て前日のことを報告したら、また、外出してそのまま帰宅するということが頻繁に行われていました。
こうしたときに、会社としては何時まで働いていたのか客観的な資料による確認ができないので、外出先から早く家に帰ったときも、遅くまで働いたときも、1日8時間働いたことにして給料の計算をしても良いということになっているのです。普段の仕事の量から見て、この業務なら1日10時間かかるとすれば、その通りに1日10時間(つまり毎日残業2時間したとみなす)と決めても良いのです。

つまり、1日8時間働いたと「みなし」て給料を払うというシステムです。もし10時間と「みなし」たら、1日2時間分の残業代も払われます。
この法律は今でも有効ですが、携帯電話が大変に普及している現代では、会社から外出中の社員に連絡は随時できますし、外出先で携帯端末からグループウエアに終業時刻を入力させることもできますから、何時まで働いたのかの確認は簡単にできます。そうした意味ではこの「事業場外労働のみなし労働時間制」が当てはまるケースは、海外旅行のツアーコンダクター、在宅勤務などの特殊な場合しかありません。一般的な働き方で、社外で仕事をしたとしても事業場外のみなし労働に当てはまるケースはごくまれだといえます。

「みなし」とならない場合には、もっとローテクな状況もあります。
たとえば、課長と部下である自分とで外回りの営業に行った。課長とともに夜9時まで働いて、直帰した。
このような場合には、労働時間を管理することができる上司が最後まで一緒にいたので、夜9時までが労働時間なりますから、「みなし」にはなりません。
あるいは、外出先から会社に戻って仕事をしてから帰る場合には、行きは直行したとしてもみなし労働は当てはまりません。通常は、始業時刻から退社時刻までがその日の労働時間となります。

あくまでも事業場外ですから、内勤の社員には絶対に当てはまりません。
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2016年3月28日

午前休取って午後8時間働いたら?

Q. 午前休を取って、午後1時から夜9時まで働きました。終業時刻以降働いた時間は割増がつくのですか?

A. わかりやすくご説明するために、時給(¥1,000/時間)の方の場合で見てみましょう。
会社は朝8時から午後5時まで(昼休み:正午から1時まで)の8時間が所定労働時間とします。
ある日、午前休(4時間)を取って、午後1時から出社して、夜9時まで(途中で1時間休憩を取りました)働きました。この日は結局8時間働いたことになります。
普通に朝8時から会社に来て働いた場合には、所定終業時刻の5時を過ぎて働いた時間は法定外労働時間となって割増がつきます。時給が1,000円ですから、法定割増の場合なら25%増しの1,250円/時間です。
でも午前休(4時間)を取り、午後から出社して5時を過ぎて働いた場合は、払ってもらえる給料は結局いくらになるのでしょうか?

まず、午前休の4時間分は、1,000×4=4,000円です。(有給休暇ですから)
この4時間は有給、つまり労働しなかった時間でも無給としないで、給料を払いますと言うことなので、お金は払ってもらっても実際に働いた時間とはなりません。月給の人なら、この4時間会社に来ないで、働かなかったとしても欠勤控除されないで、通常の給料が払われると言うことです。

次に、午後1時から午後9時までの実働8時間分について見てみましょう。
1,000×8=8,000円です。
そうするとこの日の給料は、4,000円+8,000円=12,000円です。
午後5時以降の4時間分に割増がついていませんが、これで正しいです。
法定時間外労働(残業)したときの割増の考え方は、実働8時間を超えた労働時間に対して付くので、この日は午後1時から午後9時まで途中休憩1時間を挟んで8時間だけ働いたから、通常の時給1,000円だけでよいことになります。午前休の4時間分を足せば12時間となって、4時間分は割増がつくのではないかと考えがちですが、給料は12時間分払われているので不足はありませんし、休暇の時間や日にちは、働いていない時間なので、実働時間には含めないので、割増はつきません。

月給の人の場合も考え方は同じなのですが、月給と労働時間に関してご説明します。
ある会社の正社員で、基本給25万円ですが、勤務条件は、1日8時間勤務、1ヵ月平均の所定出勤日数は20日とします。
この人は、1年を通じて平均して1ヵ月160時間(8時間×20日)働くことで基本給25万円をもらっています。
ある日、所用ができたので、午前中4時間会社に来ませんでした。
これは通常は、遅刻か欠勤扱いとなりますから、不就労時間分として、4時間分の基本給(250,000÷160×4=6,250円)が引かれます。

でも、この日の午前中は会社に来られないことが前もってわかっていたので、事前に午前休の申請を出しておきましたから、6,250円の欠勤控除はされませんでした。
この人は、この日仕事が忙しかったので夜9時まで残って仕事をしました。(途中休憩1時間取りました)5時から9時まで働いた時間は割増がつく法定時間外の残業になるのでしょうか?

この日は実働8時間なので、法定時間外労働はないです。でも定時を過ぎて働いた4時間分は、1ヵ月の所定労働時間160時間を超えて働いた時間となりますから、割増がつかない時間外手当が追加されます。この月の月給は基本給25万円+時間外労働4時間分6,250円となります。なんとなく、朝8時から働いたのと同じだから、5時以降は割増が付く法定時間外労働になるのではないかという解釈が出てきそうですが、割増に限って言えば、実働時間が8時間を超えなければ付かないという原則があることを覚えておいてください。

たとえば、この日、夜9時までは働かないで、定時の5時に帰ったとしますと、この日の労働時間は4時間しかありません。所定就業時間の8時間に4時間足りません。でも午前休を取っていますから給料明細書上は、基本給25万となります。欠勤控除はありません。
2016年3月22日

昨年度のサービス残業代142.5億円

厚生労働省が発表した資料では、H26年度(H26/4~H27/3)に、労働基準監督署の是正勧告・指導を受けてサービス残業代が払われたのは1、329社で金額にして142.5億円だったとなっています。
この数字は、1社で100万円以上のサービス残業代を払ったケースをまとめたものなので、100万円に満たない金額のサービス残業代も監督署の勧告・指導によって払われたと思いますが、ここの件数には入っていません。

H26年度とH25年度(H25/4~H26/3)の数字を比較するとどのようなことが見えてくるでしょうか?
       H25      H26
是正企業数: 1,417社   1,329社

さかのぼって  123億円   142億円
払われた残業代

対象労働者数: 11.5万人  20.3万人

1社あたりの: 871万円   1,072万円
サービス残業代

労働者一人の   11万円   7万円
サービス残業代

1社で払った: 4.5億円   14億円
最高額

こうしてみてみると、H26年度はH25年度に比べて社員数の多い(規模が大きい)会社が労基署による是正・指導を受けたのではないかと思われます。いわゆる「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)が東京都と大阪府に導入されたのはH27年度(H27年4月)ですから今年度はもっと金額が増えるかもしれません。

サービス残業が多かった業種は、製造業、商業、保健衛生業、建設業の順になっていて、この順番はH25年度も同じです。

労働基準監督署の是正・指導とは、どのようにして行われるのでしょうか?
労働者から労働基準監督署に対して、サービス残業させられていると申告することによって、監督官が会社に調査に行くというパターンが多いかと思います。 会社に事前の通知なしに、いきなり監督官が来ますので、会社はびっくりしますが、そうしないと証拠書類を隠してしまったり、破棄してしまったりするおそれがあるので、1回目は事前通告なしに調査に来ますが、職権乱用でも何でもありません。

サービス残業は労働基準法違反ですから、罰則もあります。会社と使用者(社長などの経営者)の両者が刑罰を受けるので、大変なことになります。

それよりも、過重労働によって、健康を害してしまったり、最悪の場合には命を落としてしまうこともあり(過労死や過労自殺など)、実際にこうした事件は頻発しています。労働基準監督署だけでなく、社会としてこうした悲劇をなくすためには、労基法違反をしている企業に、我々も目光らせていなければなりません。
その一つの方法が労基署へのサービス残業の申告です。口頭でもいいし、紙に書いて示してもよいのですが、できれば、勤務状況と給与明細書を示して残業していたことと、その残業代が払われていないことを証明しましょう。

それと、一番大事なことですが、長時間労働や過重労働はできるだけ避けて、健康を害さないように、自分を守りましょう。もしほかの人に迷惑がかかるからといって、自分ががんばればよいと思ってしまうような状況だったら、一人で抱え込まないで、助けを求めましょう。
コラム — タグ: — 10:13 AM
2016年3月6日

歩合給にも時間外割増が付くんです

歩合給の割増賃金
営業職の方の中には、売上高に応じた歩合給が支給されていることもあるのではないでしょうか。
給与明細には、基本給+残業代+歩合給+通勤手当といった項目が並んでいるかと思います。
給与明細書はよく見て下さいね。そして2年間は、捨てないで持っていていください。

この残業代ですが、歩合給にも残業代が付くのをご存知でしたか?

歩合給は、たとえば、売上高の1%だったりします。
この場合、100万円の売上があれば、歩合給は1万円となります。
こうした計算方法は、会社が給与規定で決めていることなので会社ごとに違います。
売上歩合給をもらっている方でしたら、多分その会社の計算方法はご存知かと思いますが、不安なときは確認しておくと良いです。

この売上歩合給に対する時間外割増は、普通の残業代の計算方法とは少し違います。

売上高というのは、いくらまでが所定労働時間内の売上で、いくら以上は残業時間中の売上かわからないので、歩合給の全額を総労働時間で割って1時間あたりの単価を出します。

上の図を見てください。普通の残業代の計算方法とは少し違っていますので、ご説明します。

例えば、今月の歩合給が18万円で、この売上を出すために、総労働時間(所定162時間+残業時間18時間)で180時間かかりました。
そうすると、歩合給の1時間あたりの単価は1,000円となります。
残業代はこの1,000円に割増率(法定なら25%)と残業時間数(18時間)をかけます。
1,000×0.25×18=4,500円
これが、歩合給に対する残業代です。
歩合給の残業代は割増分しか出ませんが、これで労基法を満たしていますから違反になりません。
これは、歩合給は総労働時間(ここでは180時間)分については18万円がすでに払われているので、あとは残業時間分の割増分だけ追加で払えば良いからです。

もちろん基本給部分に対する18時間分の残業代も発生しますから、残業代が2つ出てきます。

ここで、普通の残業代計算について確認しておきましょう。

普通の残業代は、(基本給+諸手当)÷ 所定労働時間数 ×(1+割増率)× 残業時間です。

具体例で見てみましょう。
基本給160,000円
営業手当 2,000円
所定労働時間:1ヵ月平均で162時間
残業時間:18時間
という条件で計算すると、
(160,000+2,000)÷162×(1+0.25)×18=22,500

今月の残業代は、合計で22,500円+4,500円=27,000円となりました。

歩合給の残業代のことは知らない会社もたくさんありますので、給与明細書をもらったらよく確認してください。

過去に遡って請求できるのは請求した時の直前の給料日から遡って2年分までです。(時効によりそれ以上前の期間については請求しても会社に時効を援用されてしまいます。)
また、給料明細書と毎月の総労働時間が証明できる書類をとっておいてください。
会社をやめてからでも未払い残業代として会社に請求できます。ただし急がないと時効でどんどん請求額が減って行ってしまいますのでお急ぎください。
2015年9月6日

サービス残業代は請求できる

サービス残業、みなし残業、許しません。 2年前までさかのぼって請求できます。

残業代を払ってくれるがその時間に上限があり、それ以上残業しても払ってくれない

残業時間に応じた残業代全額を支払うのは、企業の義務です。 働く側としては、しっかりと残業時間と業務内容の記録を残しておくことが重要です。 会社は、「残業命令していないから、残業代を払う義務はない」等と言ってくることがありますが、仕事をしていたのであれば、黙示の業務命令が出されていたことになるので、会社は給料を払う義務があります。ただし、請求できるのは請求月から2年前までしかさかのぼれないので、会社をやめた後で請求する場合は急ぎましょう。 (続きを読む…)
2015年8月15日

時給が違うぞ-4

この事例も今回が最終回です。
結果は、当方が請求した、過去3年間の未払い残業代.深夜手当が100%払われました。

前回お話しした、未払い残業代の請求の手紙は、依頼者の女性が工場長に渡したそうです。
それを読むなり、工場長は、『できるだけはやく返事する。』と言ったそうですが、実にスピード解決でした。

未払い残業代は翌月の給料日に月給と一緒に払われたのです。

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コラム — タグ: , , , — 5:06 PM