審査請求は3ヵ月以内に、に変わりました

労災事故という言葉は聞いたことがあるかもしれません。仕事中に仕事が原因でけがや病気になったときには、健康保険ではなく労災保険から、治療費が出たり、治療のために会社を休んで給料が出ないときに収入の補填がなされます。ところが、たまに、労災に認定されなかったということが起きます。

このような場合には、もう一度申請の中身をよく検討してもらい、給付を出してほしいという趣旨の不服申し立てをすることができます。雇用保険についても不服申し立て制度はあります。厚生労働省が配布しているパンフに、下の図のような図解が載っていますので参考にして下さい。雇用保険も労災保険も基本的には手続きの流れは同じです。

雇用保険審査請求は3ヵ月以内に_2

今年(H28年)4月1日以降の日付で発行された、労災給付の不支給や障害等級決定通知その他の処分に対する不服申し立て(労働保険審査請求など)は、その行政処分(たとえば、療養補償給付の不支給の決定)を知ったときから3ヵ月以内にすることに変更されました。これは、50年ぶりに改正された行政不服審査法に基づくものです。この改正によって、年金や健康保険関係は、審査請求で認められなかったときは、そこから半年以内なら裁判を起こすことも可能になりました。(今までは再審査請求までやって、その裁決が出なければ裁判を起こすことができませんでした。)

国を相手に裁判で争うのは本当に大変ですが、再審査請求の裁決まで待てないなどの事情がある場合には、この改正法によって、今までよりも早く裁判を起こすことができるようになりました。
ともかく、審査請求(1回目の不服申し立て)は今までは、不支給などを知ったとき60日以内でしたから、約1ヵ月間、申立期間が延長になりました。これは申請者側にとっては今までと比べたら、不服申し立ての準備期間が長くとれるようになりますから、制度が改善されたとことになります。

でも、申請が遅れればそれだけ結果も遅くなるので、書類がそろったと思ったら、すみやかに提出しましょう。たとえば、第三者の証言とか、医師の意見書とか、入手に時間がかかるような追加資料は申立書提出後でも出すことができます。

審査請求の申立書を送る方法で、私がおすすめするのは、レターパックによる郵送です。封筒を前もって買っておけば、書類を入れてポストに入れるだけ。4Kgまで送ることができるので、書類なら相当の量を送ることができます。書類以外でも荷物も送ることができます。
土日でも投函できますし、バーコード付きのレシートをはがして持っていれば、その番号で調べれば、いつ相手方に届いたかもインターネット上でわかります。

郵送なら、消印の日付が3ヵ月以内に入っていれば、期限内に申し立てしたことなりますから、期限の日が土日で郵便局が閉まっているときなどはレターパックで発送できるのは強みです。私は、このレターパックの宛名書き面のコピーを保管しておくようにしています。

求人票と違う契約内容

求人票と違うぞ2

ハローワークで見た求人票の内容と違う契約内容で採用された。これって、わりとよくあります。
求人票はあくまでも広告なので、実際に採用されるときは個別の労働契約を結ぶことになるので、多少の条件の違いはあるかもしれません。
それでもあまりに違うときは、求人票の発行元のハローワークに通告して下さい。

たとえば、ⅰ)求人票に書かれていた時給に比べて低い、ⅱ)隔週で土曜出勤がある、ⅲ)交通費を出してくれないなどさまざまことが求人票の内容と違うとか、大事なことなのに書かれていなかった、といったことがあるかと思います。

社会保険、労働保険ありとなっていて、自分は基準を満たしているのに加入させてくれないのは違法です。
よくあるのが、2ヵ月契約だから、何度更新しても社会保険には加入させないとか(本当は入社時または3ヵ月目からは加入しなければいけないはずです)、雇用保険は半年勤めたら入れる(本当は、入社時から加入させなければいけないはずです)、といったことが行われていますが、これも違法です。

ちなみに上で書いた求人票と違う3つの労働条件については、労働基準法には違反してはいません。でも、そうはいっても、求人票に書かれていることとあまりに違えば、広告で言えば、誇大広告、虚偽表示に該当するおそれもありますので、ハローワークでも、放置しておけないということで、通告するようにチラシまで作っています。下の方にありますので見て下さい。(民間の求人広告の発行元も同じだと思います)

通告するときの連絡先は、その求人票をもらったハローワークでもよいし、ハローワーク求人ホットライン 03-6858-8609へ電話しても良いです。こうしたことが起きたときのために、求人票は捨てないで持っていましょう。

ただ、ハローワークのチラシを見ていただけるとわかるように、「会社に対して是正指導を行います。」となっているだけなので、個別の労働契約の一つ一つについて「時給を〇〇円にしなさい」とか「交通費を出しなさい」とまでは言ってくれないようです。
ただ、会社もハローワークから是正指導を受けると言うことは、今後の助成金の申請要件にも響きかねないので、もし是正指導を受けたら、よほどの悪質な会社でない限り、その後は問題が起きないように注意を払って求人票を作成すると思います。求職する側にとってはより正確な内容の求人内容となるわけですから、ハローワークには是非頑張っていただきたいと思います。

今は、人手不足の業界が多くあり、何とか人を確保しようと、見栄えの良い求人広告を出している会社がたくさんありますが、中身はさまざまです。あまりにひどく内容が食い違う求人票についてはハローワークに通告することで、将来的に排除することができると思いますので、是非この制度を活用して下さい。

ところで、求人票と内容が違う労働条件ですでに入社してしまっているときはどうなるのでしょうか?
書面で労働条件が通知されている場合や、労働契約書に署名押印している場合には、契約した後から、求人票の内容と違うと言っても、さかのぼって条件を変えてもらうのは難しいかもしれません。
最低賃金未満の時給(基本給の時給換算も同じ)ならこれは違法ですから入社時にさかのぼって修正できますが、その他のことは労基法違反の事実がないと(たとえば、サービス残業させられている)、ハローワークがどこまでやってくれるかはわかりません。でもやはりここで大事になってくるのは求人票ですので、入社が決まっても捨てないで持っていましょう。

求人票と違うぞ

ノーワークノーペイとは何のことですか?

A. ノーワークノーペイの原則のことですね。

ノーワーク、つまり働かなければ、
ノーペイ、給料は払わない。

という原則です。たとえば、1日欠勤したら、一日分の給料を引かれてしまいますが、これは違法ではありません。働かなかった時間や日の分は給料を払いませんというノーワークノーペイの原則があるからです。

会社の就業規則か、給与規定をよく見ると、遅刻、早退や私用外出したときは給料を1時間単位で控除(カットすること)するとか、無給の特別休暇制度(欠勤扱いにはならないが、有給休暇ではない)があるといったことが書かれているかと思います。これはみんな、働いていない時間や日については給料は払いませんというノーワークノーペイの原則(労基法24条)が根拠になっています。

労働基準法24条は、「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を払わなければならない。」と定めていますが、全額とは働いた分について全額を払えと命令していることなので、裏返せば、働かなかった部分の給料は払わなくてよいということになります。

時給制や日給制の人なら元々そのような給料計算方法になっているので、当たり前のことかもしれませんが、月給制の人には基本給が減らされてしまうという事態が起きたら驚くかもしれません。
ただし、日割りや時間割で計算された欠勤控除以上の金額が引かれてしまっているときは、ペナルティー(制裁)も含まれているので注意が必要です。ペナルティーは上限が決まっているので、それ以上は控除してはいけないことになっているからです。これは少し複雑なので、こちらのページでご説明していますのでご覧下さい

さてノーワークノーペイにも例外があります。
こちらの方が大切なことなので覚えておいてください。

1番目は有給休暇です。年次有給休暇とか、慶弔休暇のような特別休暇(有給)は、会社を休んで働かない日や時間があっても給料を引かれないですね。最近は半日休暇や、時間単位の有休の制度がある会社も増えてきたので、活用してください。

もう一つの例外は、休業手当です。

会社を休まなければならなかったのは会社のせいで、自分のせいではないという時の所得保障のことです。これは民法536条2項の危険負担という考え方によるものなのですが、たとえば、会社が経営上の理由から工場や店を1ヵ月閉鎖したようなとき、社員はそこで働くことができません。ノーワークノーペイの原則を当てはめたらこの1ヵ月分の給料がもらえませんね。そこで、休業の理由が会社の責任だ(使用者の責に帰すべき事由がある)という場合には、社員は休業期間中の給料を請求できるというわけです。ただしこの民法の規定は会社と社員の合意(特約)により排除してしまうことができるので、就業規則でそのように定めている場合があります。

そうすると、社員としてみれば会社が長期間休業してしまうと、給料が入りませんから、生活できなくなってしまいます。そこで、労働基準法26条で、会社のせいで休業した場合には、会社に対して、休業した日について平均賃金1日分の60%以上を払うように命令しています。これは強制ですので、26条違反には罰則があります。もし、裁判になって、会社が負ければ、最大で休業手当と同額の付加金の支払い(倍返し)を命じられることがありますから、社員の権利はよく守られていると思います。よく休業補償と混同しがちですが、こちらは休業手当ですので就業規則の項目を探すときもご注意ください。

休業手当は就業規則にたとえ書かれていなかったとしても、労基法による強行規定ですので、26条を根拠に会社に請求できます。平均賃金の60%では低い思われるかもしれませんが、民法536条2項と違って支給が保障されているので、権利は保障されているわけですから、ある程度は妥協せざるを得ないかもしれません。もっとも条文上は「100分の60以上の手当を払わなければならない。」となっているので、就業規則で何も決めていなければ100%請求することも可能です。なお、この休業手当は給与所得として通常の給料と同様に課税対象となります。