最低賃金という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 日本では、都道府県別に1時間あたりの最低賃金が決まっています。
会社は、社員に対して、健常者であれば、例外なく、最低賃金以上の給料を払わなければ法律違反となります。社員とは、アルバイトでも、パートタイマーでも、嘱託社員でも呼び名には全く関係ありません。
または、採用直後の研修中だから最低賃金以下の給料でも良いとか、経験がないから、はじめの半年は最低賃金以下の給料しか払わないといったことも全部法律違反です。
さらに、固定残業代、通勤手当や精勤手当、皆勤手当その他の手当は最低賃金を計算するときには含めてはいけません。 そのようなわけで、東京では令和元年10月以降に働いた分から1時間あたり1,013円が最低賃金と決まりました。各地の最低賃金はこのサイトに一覧表を載せましたのでご覧ください。ついに東京と神奈川では1,000円を超えました。 ところで、最低賃金は時給でしか決まっていませんが、もちろん月給者にも当てはまります。
この場合、どのように計算するのでしょうか?・・・ご自分で計算できます。 たとえば、毎月の標準的な出勤日数が21日で、1日8時間勤務の会社に勤めていたとします。そうすると1ヵ月の労働時間(所定労働時間といいます)は
21×8=168時間ですので、
これに東京の最低賃金である1,013円をかけます。 168×1,013=170,184円が月給の場合の最低賃金となります。 所定労働時間が168時間の会社に勤めている人が、今もらっている給料の全体の内、通勤手当と皆勤手当と固定残業代を除いた金額がこの170,184円以上であれば、会社は法律違反していないということになります。 とはいっても、給料は最低の金額が決まっているだけなので、これ以上の金額を払うことは何の問題もありません。人手不足の状態なら給料は上がるでしょうし、特殊が能力を持っている人とか、経験が豊かな人には高い給料が払われることも良くあることです。 でも、もう一つ注意しなければならないことがあります。 たとえば、基本給に30時間分の残業代が含まれているような場合です。 (実は、固定残業代を基本給に含めて払うやり方は、黒にかなり近いグレーゾーンで、裁判では残業代未払いの状態だと判断されていますが、実際には多数行われているので、ここで最低賃金との関係を確認しておきましょう。) たとえば、基本給18万円の中に30時間分の残業代が含まれているとして(但しこの方法は法律違反すれすれです。本当は、基本給と固定残業代は区別して金額を設定しなければならないからです。)、時給換算したら、最賃割れしていないかどうか計算してみましょう。所定労働時間は168時間と仮定します。 もし会社が、固定残業代が具体的に何時間分の残業代に相当するかをきちんと明示しなければ、基本給に残業代が含まれるという話は全く無効となり、残業代は1時間分から基本給に上乗せして払われなければなりません。そのほかにも、基本給には30時間分の残業代が含まれていることが労働契約書にかかれていても、30時間以上残業した時は30時間を超えた分の残業代は基本給に上乗せして払われなければ、法律違反です。 まず、法定時間外の残業代には、労働基準法によって、最低でも25%の割増がつくので、基本給に30時間分の残業代が含まれているとするなら、実際には基本給+30時間分の固定残業代としての18万円が払われているということになります。令和元年度の東京の最低賃金で計算すれば、基本給ですでに170,184円ですから、基本給に含まれる残業代は9,816円でしかないことになります。 それでも一応計算してみます。この場合、総労働時間で見てみれば、168+30×1.25=205.5時間働いたことになるのと同じ事ですから、 18万円は205.5時間分の給料ということになります。
次に時給換算すると、180,000円÷205.5時間≒876円(1円未満四捨五入)
となりますから、東京都などで働いている人には最低賃金以下の給料しかもらっていないことになって、会社は法律違反となります。 逆に、9,816円は何時間分の残業代になるか計算してみましょう。 東京都の最低賃金で1時間当たりの残業代は、1,013×1.25≒1,266です。 そうすると、9,816÷1,266=7時間45分 の残業代にしかならないです。
あと22時間15分分の残業代は18万円に上乗せして払ってもらわなければ、サービス残業となりますから会社は法律違反していることになります。 さらに、派遣社員の場合には、派遣先での最低賃金が適用されるということです。たとえば、山梨県の最低賃金は837円ですから、東京都と176円も差があります。そこで、山梨県内にある派遣元で登録した派遣社員が東京都にある派遣先で働いたときに、時給900円だったとすれば、山梨県ではOKでも東京都では違反となります。この場合どちらの最低賃金で判断するかといえば、派遣先の東京都の最低賃金を下回っているかどうかで判断します。今はもうこんなことをする派遣会社はないかもしれませんが、派遣元と派遣先が県をまたぐような場合は、念のため確認しておいてください。 もし最低賃金以下の給料しか出ていないときは、まずは穏便な形で会社に確認しましょう。うっかりミスの場合もあるかもしれないからです。この場合には、差額をさかのぼって払ってもらい、今後は正しい金額で時給を払ってもらえばそれで完了です。
もし、指摘しても修正しないような場合には、意図的にやっている危険性もあるので、労働基準監督署に相談しましょう。労働基準監督署に言うと大事になってしまってかえって居づらくなってしまうと心配されるときは私に相談してください。 いずれの場合でも、まちがった金額で給料が計算されているということを証明するためには、給与明細書が一番良い、かつ絶対的な証拠書類です。労基署への申告の時にも必要なものですから、今月分からでも良いので、捨てないで、取っておいてください。そのほかには、労働条件通知書(雇用契約書)や求人票などもあるとよりよいです。 ここ数年来人で不足が続いていて、時給も上がってきているようですが、中小零細企業や飲食業などのサービス業は依然として経営環境が厳しく、人件費を抑制しようといろいろと工夫をしています。法律違反がなければ良いのですが、最低賃金割れしていることもあります。働く方もよく注意したいです。