労災と解雇-4

コラム,解雇 — 2015年7月15日6:50 PM

病気やケガをして、長期間、会社を休むときに、休職という扱いを受けることがあります。休職中は、それが労災事故によるものであったとしても普通は給料は出ません。(ノーワークノーペイの原則)その代わり、(十分ではないにしろ)健康保険の傷病手当金や労災保険からの休業補償給付が支給されます。

と、ここまではいいのですが、病気やケガが快方に向かい、職場に復帰できるような状態になったとき 復職という手続きが出てきます。通常、復職できるかどうかは、ケガや病気をした本人が決めるのではなく、会社が判断します。判断の基準は主治医の診断書だったり、会社の産業医だったり、会社から依頼される医師による診断書だったりします。ですから、その診断書の内容によっては、会社が職場復帰を認めないということも現実にあります。たとえば、その人が元の職場での勤務はできないとか、再発の可能性が指摘されているとか、別の部署への配置転換ができない状況だとか、理由は多種多様です。

職場復帰できないとなると、その社員は生活に困窮してしまいます。健康保険の傷病手当金は1年半で終わってしまいますし、労災の方の補償も1年半たった時点で、傷病補償年金へ切り替わりますが、その時点で、症状が軽くなっていれば、支給されないこともあります。また、会社に戻れないというつらさや、早く職場復帰したいという気持ちの焦りから、自分に無理を強いることになり却って快復を遅らせてしまうといったことにもつながります。

実はこれだけではないので、復職に伴う労使トラブルは結構発生してしまいます。

どういう事かというと、休職期間というのは、ほとんどの会社では期間が決まっていて、その期間内に復職できなければ、自動的に退職扱いとなると就業規則で決めています。  つまり、労災を除くいわゆる私傷病の場合には、始めに決まっていた休職期間が延長されない限り、休職期間内に復職できなければ、自動的に会社を辞めなければならなくなってしまうのです。そしてその復職を認めるのは会社だということなのです。この時の手順や必要な書類について細かく決めていないことが多く、ブラックボックス化しています。

ここが問題です。本人は復職できると考え、主治医もそのように診断書を書いてくれているのに、会社の方では、根拠を示さずに、まだ無理だから復職させないとか、休職期間満了により退職扱いにするといって復職を拒否することが往々にしてあるのです。その判断が本当に産業医や専門医の意見を尊重した結果なのか、それとも会社の恣意的な意見が含まれているのか、わからないので、本人は会社に対して不信感を抱くようになります。つまり、休職をいいわけにしてクビにされた、というものです。

こうなると、復職させろ、させないの応酬となりトラブルになってしまいますし、当事者同士での解決はほぼ不可能です。あっせんや労働審判で何とか和解できるか、あるいは、訴訟を起こして、裁判所に判断してもらうことになってしまいます。労使トラブルの中でも、解決が困難なトラブルの一つです。

ではこのようにならないためにはどうしたらよいかですが、休職前に、復職の条件や手続きについて会社と詳細に約束を取り交わしておくことです。復職の判断は主治医の診断書で行うとか、会社が主治医に意見を求めることを認めるとか、といった様々なことです。また、休職期間中も会社と定期的に連絡を取り合っておくことも大切です。そして、治療に専念して、一日も早く回復できるように努力することです。

町田さんの場合は、業務災害でしたから、休職期間満了による自動退職という扱いは受けることがないのですが、本人が、ケガが治ったので復職したいと申し出たところから、新たなトラブルの芽が発生しました。