業務災害のキーワードとして、「業務起因性」と「業務遂行性」の2つがある事はもうご存知ですね。
仕事をしているときに仕事が原因でケガや病気になったときには、労災事故として、治療費などの補償をしてくれます。
けがの場合は、比較的わかりやすいですが、病気の場合は、発病時期や原因を調べて本当に労災事故となるのかどうかの判断がなされます。労災と認めるかどうかは労働基準監督署が判断しています。
特に、うつ病などの精神疾患の場合は、外傷がなく、レントゲンを取っても病巣が分からないなどの特徴があり、本人の申告にに基づいて、医師が治療を行っています。従って、いつ病気になったのか、その原因は何かということが本人にしか分からないということです。ここに、労災認定の難しさがあります。なぜでしょうか?
業務起因性と業務遂行性を、どのようにしたら認められるのか、病気になった本人にデータが無いからです。
労災保険側では、意地悪して労災を認めないなどということは一切ありません。あくまでも、データや本人、職場の同僚などから得られた事実に基づいて、不公平のないように、労災補償給付を出す出さないを決めていますから、業務遂行性や業務起因性のどちらかでも欠けていると判断されれば、労災とは認められないということになります。
そこで、公平性を保つため、ある一定の基準を設けて、それに合致するような働き方や、出来事があった場合には労災と認めましょうということをしてきていますが、その基準が平成21年4月に改定されています。さらに、労災申請件数が増えてきたことと、労災認定までに大変長い時間(平均8.7カ月)がかかっている事から、認定の迅速化をするために医師や法律学者などの専門家による、専門検討会が厚生労働省で開催されていて、6回目の検討会が5月31日に開かれています。
なお、この専門検討会の特別部会として、「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」もほぼ同時期に開催されています。
ところで、労災に認定される精神疾患の病気は種類が決まっています。
主にはうつ病(気分[感情]障害)、統合失調症、ストレス関連障害、成人のパーソナリティ及び行動の障害など、10種類で、これは国際疾病分類第10回修正(IDC-10)第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害となっています。
これらの精神疾患に、仕事中に業務が原因で、発病したかどうかを見るわけです。
その心理的負荷を3段階に分類して、日常まれな強い負荷があったか(強度Ⅲ)、日常的ではないが、まれでもないくらいの強い負荷(強度Ⅱ)が重なったか、などを評価表にあてはめて行きます。例えば、強度Ⅱのできごタオがあった後、長時間労働月ズいたときなどは強度をⅢに引き上げることをする調整もあります。
H21年4月に追加された強度Ⅲの出来事の中には、職場で「ひどいいじめ、いやがらせまたは暴行を受けた」という項目があります。いわゆるパワハラですね。
会社の側でもこうした労災事故を予防するための取り組みをしていますが、(あるいは求められています)それは又機会を見てご説明することにします。