求人票と違う契約内容

求人票と違うぞ2

ハローワークで見た求人票の内容と違う契約内容で採用された。これって、わりとよくあります。
求人票はあくまでも広告なので、実際に採用されるときは個別の労働契約を結ぶことになるので、多少の条件の違いはあるかもしれません。
それでもあまりに違うときは、求人票の発行元のハローワークに通告して下さい。

たとえば、ⅰ)求人票に書かれていた時給に比べて低い、ⅱ)隔週で土曜出勤がある、ⅲ)交通費を出してくれないなどさまざまことが求人票の内容と違うとか、大事なことなのに書かれていなかった、といったことがあるかと思います。

社会保険、労働保険ありとなっていて、自分は基準を満たしているのに加入させてくれないのは違法です。
よくあるのが、2ヵ月契約だから、何度更新しても社会保険には加入させないとか(本当は入社時または3ヵ月目からは加入しなければいけないはずです)、雇用保険は半年勤めたら入れる(本当は、入社時から加入させなければいけないはずです)、といったことが行われていますが、これも違法です。

ちなみに上で書いた求人票と違う3つの労働条件については、労働基準法には違反してはいません。でも、そうはいっても、求人票に書かれていることとあまりに違えば、広告で言えば、誇大広告、虚偽表示に該当するおそれもありますので、ハローワークでも、放置しておけないということで、通告するようにチラシまで作っています。下の方にありますので見て下さい。(民間の求人広告の発行元も同じだと思います)

通告するときの連絡先は、その求人票をもらったハローワークでもよいし、ハローワーク求人ホットライン 03-6858-8609へ電話しても良いです。こうしたことが起きたときのために、求人票は捨てないで持っていましょう。

ただ、ハローワークのチラシを見ていただけるとわかるように、「会社に対して是正指導を行います。」となっているだけなので、個別の労働契約の一つ一つについて「時給を〇〇円にしなさい」とか「交通費を出しなさい」とまでは言ってくれないようです。
ただ、会社もハローワークから是正指導を受けると言うことは、今後の助成金の申請要件にも響きかねないので、もし是正指導を受けたら、よほどの悪質な会社でない限り、その後は問題が起きないように注意を払って求人票を作成すると思います。求職する側にとってはより正確な内容の求人内容となるわけですから、ハローワークには是非頑張っていただきたいと思います。

今は、人手不足の業界が多くあり、何とか人を確保しようと、見栄えの良い求人広告を出している会社がたくさんありますが、中身はさまざまです。あまりにひどく内容が食い違う求人票についてはハローワークに通告することで、将来的に排除することができると思いますので、是非この制度を活用して下さい。

ところで、求人票と内容が違う労働条件ですでに入社してしまっているときはどうなるのでしょうか?
書面で労働条件が通知されている場合や、労働契約書に署名押印している場合には、契約した後から、求人票の内容と違うと言っても、さかのぼって条件を変えてもらうのは難しいかもしれません。
最低賃金未満の時給(基本給の時給換算も同じ)ならこれは違法ですから入社時にさかのぼって修正できますが、その他のことは労基法違反の事実がないと(たとえば、サービス残業させられている)、ハローワークがどこまでやってくれるかはわかりません。でもやはりここで大事になってくるのは求人票ですので、入社が決まっても捨てないで持っていましょう。

求人票と違うぞ

ノーワークノーペイとは何のことですか?

A. ノーワークノーペイの原則のことですね。

ノーワーク、つまり働かなければ、
ノーペイ、給料は払わない。

という原則です。たとえば、1日欠勤したら、一日分の給料を引かれてしまいますが、これは違法ではありません。働かなかった時間や日の分は給料を払いませんというノーワークノーペイの原則があるからです。

会社の就業規則か、給与規定をよく見ると、遅刻、早退や私用外出したときは給料を1時間単位で控除(カットすること)するとか、無給の特別休暇制度(欠勤扱いにはならないが、有給休暇ではない)があるといったことが書かれているかと思います。これはみんな、働いていない時間や日については給料は払いませんというノーワークノーペイの原則(労基法24条)が根拠になっています。

労働基準法24条は、「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を払わなければならない。」と定めていますが、全額とは働いた分について全額を払えと命令していることなので、裏返せば、働かなかった部分の給料は払わなくてよいということになります。

時給制や日給制の人なら元々そのような給料計算方法になっているので、当たり前のことかもしれませんが、月給制の人には基本給が減らされてしまうという事態が起きたら驚くかもしれません。
ただし、日割りや時間割で計算された欠勤控除以上の金額が引かれてしまっているときは、ペナルティー(制裁)も含まれているので注意が必要です。ペナルティーは上限が決まっているので、それ以上は控除してはいけないことになっているからです。これは少し複雑なので、こちらのページでご説明していますのでご覧下さい

さてノーワークノーペイにも例外があります。
こちらの方が大切なことなので覚えておいてください。

1番目は有給休暇です。年次有給休暇とか、慶弔休暇のような特別休暇(有給)は、会社を休んで働かない日や時間があっても給料を引かれないですね。最近は半日休暇や、時間単位の有休の制度がある会社も増えてきたので、活用してください。

もう一つの例外は、休業手当です。

会社を休まなければならなかったのは会社のせいで、自分のせいではないという時の所得保障のことです。これは民法536条2項の危険負担という考え方によるものなのですが、たとえば、会社が経営上の理由から工場や店を1ヵ月閉鎖したようなとき、社員はそこで働くことができません。ノーワークノーペイの原則を当てはめたらこの1ヵ月分の給料がもらえませんね。そこで、休業の理由が会社の責任だ(使用者の責に帰すべき事由がある)という場合には、社員は休業期間中の給料を請求できるというわけです。ただしこの民法の規定は会社と社員の合意(特約)により排除してしまうことができるので、就業規則でそのように定めている場合があります。

そうすると、社員としてみれば会社が長期間休業してしまうと、給料が入りませんから、生活できなくなってしまいます。そこで、労働基準法26条で、会社のせいで休業した場合には、会社に対して、休業した日について平均賃金1日分の60%以上を払うように命令しています。これは強制ですので、26条違反には罰則があります。もし、裁判になって、会社が負ければ、最大で休業手当と同額の付加金の支払い(倍返し)を命じられることがありますから、社員の権利はよく守られていると思います。よく休業補償と混同しがちですが、こちらは休業手当ですので就業規則の項目を探すときもご注意ください。

休業手当は就業規則にたとえ書かれていなかったとしても、労基法による強行規定ですので、26条を根拠に会社に請求できます。平均賃金の60%では低い思われるかもしれませんが、民法536条2項と違って支給が保障されているので、権利は保障されているわけですから、ある程度は妥協せざるを得ないかもしれません。もっとも条文上は「100分の60以上の手当を払わなければならない。」となっているので、就業規則で何も決めていなければ100%請求することも可能です。なお、この休業手当は給与所得として通常の給料と同様に課税対象となります。

介護休業はなぜ93日しかないの?

介護離職ゼロ政策を掲げている現政権ですが、法律上取ることができる介護休業は最大93日となっています。
また、雇用保険から支給される介護休業給付金も93日が上限です。会社がもっと長期間の休業を認めれば別ですが、そうでない場合には、会社の規定もMAXで93日の介護休業がとれることとなっていると思います。

実際の介護ではとても93日では終わらないから、現実的ではないと考える方がたくさんいます。

ところが、介護休業の本当の目的は、少し違うところにあります。

たとえば、自分の親が要介護状態となったと思われるときには、介護保険を使って、介護サービスを受けられるように手配をすることになるわけですが、この手配にはかなりの手間と時間がかかります。
親が住んでいるところにケアマネージャーに来てもらわなくてはならなかったり、手すりなどを付けてもらうための工事に立ち会わなければならなかったり、そういった意味で、会社を休まなければならないことが多くなるので、法律で介護休業の制度を作り、休みやすくするようにしたということなのです。

この93日の範囲内であれば、丸1日休まなくても短時間勤務に切り替えて働くこともできるし、介護休業とは別に、毎年5日まで(要介護者が2人以上の場合は10日まで)の介護休暇も取れるようになっています(1日ずつばらばらに取ることも可能)。

要介護の親が、日常的に介護サービスを受けられるようになれば、自分は会社を長期に休まなくても(あるいは辞めなくても)良くなるので、準備だけはよくしておきたいわけですから、この介護休業期間(給付金ももらえる)を活用することが期待されているのです。

介護休業を、親の介護をするための休業期間だと考えてしまうと、とても短くて足りないから会社を辞めざるを得ないとか、会社も、戻ってこられないなら休業しないですぐ辞めてほしいとかといった方向に話が行ってしまいます。
そうではなくて、そうならないために、介護サービスを受けられるように準備するための期間ということであれば、介護休業も申請しやすいのではないでしょうか?

今年4月1日から改正される雇用保険法では介護休業給付金も増えるということなので、介護離職を回避するためにも介護休業の趣旨を理解して活用してください。

午前休取って午後8時間働いたら?

Q. 午前休を取って、午後1時から夜9時まで働きました。終業時刻以降働いた時間は割増がつくのですか?

A. わかりやすくご説明するために、時給(¥1,000/時間)の方の場合で見てみましょう。
会社は朝8時から午後5時まで(昼休み:正午から1時まで)の8時間が所定労働時間とします。
ある日、午前休(4時間)を取って、午後1時から出社して、夜9時まで(途中で1時間休憩を取りました)働きました。この日は結局8時間働いたことになります。
普通に朝8時から会社に来て働いた場合には、所定終業時刻の5時を過ぎて働いた時間は法定外労働時間となって割増がつきます。時給が1,000円ですから、法定割増の場合なら25%増しの1,250円/時間です。
でも午前休(4時間)を取り、午後から出社して5時を過ぎて働いた場合は、払ってもらえる給料は結局いくらになるのでしょうか?

まず、午前休の4時間分は、1,000×4=4,000円です。(有給休暇ですから)
この4時間は有給、つまり労働しなかった時間でも無給としないで、給料を払いますと言うことなので、お金は払ってもらっても実際に働いた時間とはなりません。月給の人なら、この4時間会社に来ないで、働かなかったとしても欠勤控除されないで、通常の給料が払われると言うことです。

次に、午後1時から午後9時までの実働8時間分について見てみましょう。
1,000×8=8,000円です。
そうするとこの日の給料は、4,000円+8,000円=12,000円です。
午後5時以降の4時間分に割増がついていませんが、これで正しいです。
法定時間外労働(残業)したときの割増の考え方は、実働8時間を超えた労働時間に対して付くので、この日は午後1時から午後9時まで途中休憩1時間を挟んで8時間だけ働いたから、通常の時給1,000円だけでよいことになります。午前休の4時間分を足せば12時間となって、4時間分は割増がつくのではないかと考えがちですが、給料は12時間分払われているので不足はありませんし、休暇の時間や日にちは、働いていない時間なので、実働時間には含めないので、割増はつきません。

月給の人の場合も考え方は同じなのですが、月給と労働時間に関してご説明します。
ある会社の正社員で、基本給25万円ですが、勤務条件は、1日8時間勤務、1ヵ月平均の所定出勤日数は20日とします。
この人は、1年を通じて平均して1ヵ月160時間(8時間×20日)働くことで基本給25万円をもらっています。
ある日、所用ができたので、午前中4時間会社に来ませんでした。
これは通常は、遅刻か欠勤扱いとなりますから、不就労時間分として、4時間分の基本給(250,000÷160×4=6,250円)が引かれます。

でも、この日の午前中は会社に来られないことが前もってわかっていたので、事前に午前休の申請を出しておきましたから、6,250円の欠勤控除はされませんでした。
この人は、この日仕事が忙しかったので夜9時まで残って仕事をしました。(途中休憩1時間取りました)5時から9時まで働いた時間は割増がつく法定時間外の残業になるのでしょうか?

この日は実働8時間なので、法定時間外労働はないです。でも定時を過ぎて働いた4時間分は、1ヵ月の所定労働時間160時間を超えて働いた時間となりますから、割増がつかない時間外手当が追加されます。この月の月給は基本給25万円+時間外労働4時間分6,250円となります。なんとなく、朝8時から働いたのと同じだから、5時以降は割増が付く法定時間外労働になるのではないかという解釈が出てきそうですが、割増に限って言えば、実働時間が8時間を超えなければ付かないという原則があることを覚えておいてください。

たとえば、この日、夜9時までは働かないで、定時の5時に帰ったとしますと、この日の労働時間は4時間しかありません。所定就業時間の8時間に4時間足りません。でも午前休を取っていますから給料明細書上は、基本給25万となります。欠勤控除はありません。

トイレタイムは休憩時間ではない

就業時間中にトイレに行っている時間は休憩時間だから給料をカットする。
今どき、こんなことをする会社はないでしょうが、最近は、ブログなどで、このようなことを言っている人も目につきます。

私は、そもそも前提が間違っていると思います。

労働時間というのは、働く人が、会社の(使用者)指揮監督の下にある時間を指すとなっています。(労働法コンメンタール上399ページ)
つまり、会社が決めている就業時間中は会社(上司)から命令を受けてその通りに仕事をしていれば、たとえ見た目には、何もしていないような時間があっても労働時間です。労働時間ですから当然、給料が払われます。

たとえば、小売店で朝10時から午後7時まで(休憩1時間)店番をしていたとします。会社からは、お客様いらっしゃらないときでも、店内で待機しているように言われています。逆に言えば、お客様が来店したら、すぐに接客ができるように、体も意識も準備した状態を保ち続けているわけですから、労働から開放された時間ではありません。いわゆる手待ち時間と呼ばれるこの時間は労働時間ですから給料カットはできません。

逆に、昼休みでも、上司から電話番をするように言われていて、「休み時間だから何をしていてもいいけど、机から離れないで電話が来たら応対するように」指示されていたら、この時間は休憩時間ではなく労働時間です。考え方は店番と同じです。ですから、昼休みを早番・遅番の2通りにして、誰かが会社にいて昼前後にかかってくる電話を取るようにしている会社もあります。また、労使協定(会社と社員代表との間で約束すること)があれば、休憩時間をずらして取ることは違反ではありません。(一斉休憩の例外)

ではトイレに行っている時間はどうなのでしょうか?トイレや水分補給のための飲水などは生理現象ですし、これを認めないと健康にも悪影響を及ぼしますから、普通は、就業時間中でもそのために席を立って職場を離れることは認められています。製造工程のラインに入っている人は、作業時間中は抜けられないので、休憩時間の回数が事務職よりも多くとってあります。たとえば、昼休みのほかに10時、3時、4時にそれぞれ5~10分などです。

事務職の場合には、トイレ休憩といった休憩時間は特に設定されていないことの方が多いと思いますが、用が済めばすぐに席に戻って仕事を続けるわけですから(そのように指示されているわけですから)、会社の指揮監督下にある時間となります。そうすると労働時間です。賃金カットをしたら労基法24条違反です。

休憩時間というのは、実質的に労働から解放され自由に利用することが保障されている時間を指すとなっています(前掲コンメンタール458ページ)したがって、休憩時間は会社で時刻や時間数を決めています。具体的には雇用契約書や就業規則に書かれています。たとえば、「休憩時間は正午から午後1時00分までの1時間」といった具合です。この時間中は何をしていてもかまいません。会社からの指示命令もありません。ただし、外出する場合には許可が必要といったことはあってもよいことになっています。

このように労働時間や休憩時間は、しっかりと定義されていますから、ブログに惑わされず、もう一度よく理解してください。

就業時間中の喫煙時間は、判断が分かれるところですが、喫煙中でも電話応対(館内PHSや携帯電話など)ができる状態だったりすれば、会社の指揮監督下にあるとして休憩時間とは見なされないでしょう。でも、健康管理のために、まず禁煙してください。

パートタイマーに通勤手当が出ないのは差別か?

正社員には通勤手当が出ているのに、パートには出ない。
こんなことがごく当たり前のように行われています。

 パートタイマーだって、電車やバスで通勤する時には費用がかかっているわけですから、毎日のことになれば、1ヵ月あたりで見れば、相当高額な金額になってしまいます。せっかく良さそうな求人を見つけても交通費が出ないなら別の求人探そうと考えてしまうことだってありますよね。

 なぜ、正社員とパートタイマーでは通勤費で差を付けてもよいのでしょうか?
差をつけてもよいというよりも、逆にパートタイム労働法によって正社員とパートタイマーは差別してはいけないはずでは?

 その通りなのですが、実は差別してはいけないパートタイマーがどのような働き方をする人なのかということについては、パート労働法9条で決まっているのです。
この決まり事に当てはまれば、強制的に差別禁止ですから通勤手当も払われなくてなりません。

パートタイム労働法9条の条文にはこのように書かれています。
事業主は、職務の内容、人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者である者については、パートタイム労働者であることを理由として、その待遇について、差別的取り扱いをしてはならない。

 このように、「~してはならない。」と書いてある条文は主語である事業主(会社)に義務を課していますから、差別的取り扱いをしたら法律違反です。これは、会社へのプレッシャーになります。(ただし、9条違反に対する罰則はありません。)

 これだけではわかりにくいので具体的に一つ一つ見ていきましょう。

1.職務の内容が正社員とパートタイマーで同じかどうか?
たとえば、小売店の販売職で比較してみましょう。
担当している主な仕事が同じかどうか?
パートタイマーは接客、レジ、品出し、清掃の担当ですが、正社員は、掃除はしませんが、接客、レジ、品出しのほかにクレーム処理や発注業務を担当しています。
この場合、接客、レジ、品出しの3つの仕事は、そのほかの仕事に比べたら、従事している時間や頻度も多く、店の運営に欠かせない中心的な仕事であるということなら、正社員とパートタイマーは実質的に同じ仕事をしていると判断します。

2.その次に、責任の程度が同じかどうかを見ます。
責任というのは漠然としていて判定が難しいですが、たとえば、クレームに対応するときの権限の範囲が正社員もパートタイマーもほぼ同じくらいなら、(ほかにもまだいくつかの要素がありますが)両者の間で責任について差はないと判断されます。

3.ここまでが第一段階で、これをクリアしたら、その次に、人材活用の仕組みや運用が同じかどうかを見ます。
これはお勤めの会社の人事制度がどうなっているかによって違いがはっきりしてくるので、雇用契約書や就業規則があれば、その内容で判断できます。
たとえば、正社員には転勤や配置転換があって、実際に転勤や人事異動があるが、パートタイマーには全くないという場合には、差別禁止のパート労働者には当てはまらないということになってしまいます。
でも、パートタイマーでも転勤があったり、人事異動で職場や仕事内容が変わったりすることがあれば、その会社の中では人材活用も同じと判定されて、差別取り扱いが禁止されるパートタイム労働者となります。
ここまで来れば、通勤手当も当然払われることになります。

 このように、差別的取り扱い禁止の対象となるパートタイマーになるには結構ハードルが高いのが実情です。
でも、これから同一値労働同一賃金の施策がもっと推し進められるようになれば、こちらのハードルも下がることが期待できます。

昨年度のサービス残業代142.5億円

厚生労働省が発表した資料では、H26年度(H26/4~H27/3)に、労働基準監督署の是正勧告・指導を受けてサービス残業代が払われたのは1、329社で金額にして142.5億円だったとなっています。
この数字は、1社で100万円以上のサービス残業代を払ったケースをまとめたものなので、100万円に満たない金額のサービス残業代も監督署の勧告・指導によって払われたと思いますが、ここの件数には入っていません。

H26年度とH25年度(H25/4~H26/3)の数字を比較するとどのようなことが見えてくるでしょうか?
       H25      H26
是正企業数: 1,417社   1,329社

さかのぼって  123億円   142億円
払われた残業代

対象労働者数: 11.5万人  20.3万人

1社あたりの: 871万円   1,072万円
サービス残業代

労働者一人の   11万円   7万円
サービス残業代

1社で払った: 4.5億円   14億円
最高額

こうしてみてみると、H26年度はH25年度に比べて社員数の多い(規模が大きい)会社が労基署による是正・指導を受けたのではないかと思われます。いわゆる「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)が東京都と大阪府に導入されたのはH27年度(H27年4月)ですから今年度はもっと金額が増えるかもしれません。

サービス残業が多かった業種は、製造業、商業、保健衛生業、建設業の順になっていて、この順番はH25年度も同じです。

労働基準監督署の是正・指導とは、どのようにして行われるのでしょうか?
労働者から労働基準監督署に対して、サービス残業させられていると申告することによって、監督官が会社に調査に行くというパターンが多いかと思います。 会社に事前の通知なしに、いきなり監督官が来ますので、会社はびっくりしますが、そうしないと証拠書類を隠してしまったり、破棄してしまったりするおそれがあるので、1回目は事前通告なしに調査に来ますが、職権乱用でも何でもありません。

サービス残業は労働基準法違反ですから、罰則もあります。会社と使用者(社長などの経営者)の両者が刑罰を受けるので、大変なことになります。

それよりも、過重労働によって、健康を害してしまったり、最悪の場合には命を落としてしまうこともあり(過労死や過労自殺など)、実際にこうした事件は頻発しています。労働基準監督署だけでなく、社会としてこうした悲劇をなくすためには、労基法違反をしている企業に、我々も目光らせていなければなりません。
その一つの方法が労基署へのサービス残業の申告です。口頭でもいいし、紙に書いて示してもよいのですが、できれば、勤務状況と給与明細書を示して残業していたことと、その残業代が払われていないことを証明しましょう。

それと、一番大事なことですが、長時間労働や過重労働はできるだけ避けて、健康を害さないように、自分を守りましょう。もしほかの人に迷惑がかかるからといって、自分ががんばればよいと思ってしまうような状況だったら、一人で抱え込まないで、助けを求めましょう。

歩合給にも時間外割増が付くんです

歩合給の割増賃金
営業職の方の中には、売上高に応じた歩合給が支給されていることもあるのではないでしょうか。
給与明細には、基本給+残業代+歩合給+通勤手当といった項目が並んでいるかと思います。
給与明細書はよく見て下さいね。そして2年間は、捨てないで持っていていください。

この残業代ですが、歩合給にも残業代が付くのをご存知でしたか?

歩合給は、たとえば、売上高の1%だったりします。
この場合、100万円の売上があれば、歩合給は1万円となります。
こうした計算方法は、会社が給与規定で決めていることなので会社ごとに違います。
売上歩合給をもらっている方でしたら、多分その会社の計算方法はご存知かと思いますが、不安なときは確認しておくと良いです。

この売上歩合給に対する時間外割増は、普通の残業代の計算方法とは少し違います。

売上高というのは、いくらまでが所定労働時間内の売上で、いくら以上は残業時間中の売上かわからないので、歩合給の全額を総労働時間で割って1時間あたりの単価を出します。

上の図を見てください。普通の残業代の計算方法とは少し違っていますので、ご説明します。

例えば、今月の歩合給が18万円で、この売上を出すために、総労働時間(所定162時間+残業時間18時間)で180時間かかりました。
そうすると、歩合給の1時間あたりの単価は1,000円となります。
残業代はこの1,000円に割増率(法定なら25%)と残業時間数(18時間)をかけます。
1,000×0.25×18=4,500円
これが、歩合給に対する残業代です。
歩合給の残業代は割増分しか出ませんが、これで労基法を満たしていますから違反になりません。
これは、歩合給は総労働時間(ここでは180時間)分については18万円がすでに払われているので、あとは残業時間分の割増分だけ追加で払えば良いからです。

もちろん基本給部分に対する18時間分の残業代も発生しますから、残業代が2つ出てきます。

ここで、普通の残業代計算について確認しておきましょう。

普通の残業代は、(基本給+諸手当)÷ 所定労働時間数 ×(1+割増率)× 残業時間です。

具体例で見てみましょう。
基本給160,000円
営業手当 2,000円
所定労働時間:1ヵ月平均で162時間
残業時間:18時間
という条件で計算すると、
(160,000+2,000)÷162×(1+0.25)×18=22,500

今月の残業代は、合計で22,500円+4,500円=27,000円となりました。

歩合給の残業代のことは知らない会社もたくさんありますので、給与明細書をもらったらよく確認してください。

過去に遡って請求できるのは請求した時の直前の給料日から遡って2年分までです。(時効によりそれ以上前の期間については請求しても会社に時効を援用されてしまいます。)
また、給料明細書と毎月の総労働時間が証明できる書類をとっておいてください。
会社をやめてからでも未払い残業代として会社に請求できます。ただし急がないと時効でどんどん請求額が減って行ってしまいますのでお急ぎください。

宮崎労働局未払い残業代なぜ1年分だけ?

宮崎県内のハローワークで残業代の未払いがあった件は、世の中を騒がせただけでなく、がっかりした人も多いと思います。批判もたくさん出ています。

サービス残業させたのは明確な違法行為ですから看過できませんが、残業時間そのものはそれほど多くないので、健康障害を起こす程の長時間ではなかったことはひとまず良かったと思います。

それより、大きな疑問が2つあります。
その一つは、なぜ、さかのぼって払った残業代が11ヵ月分だけなのか?ということです。未払い給料の請求権は給料日ごとに2年経つと時効で消滅してしまうので、一般的に、未払い残業代は請求時から2年前までしかさかのぼれないことになっています。

宮崎労働局のケースでは、2014年12月にサービス残業が発生しているとの通報があり、調査の結果未払い残業があったので、2014年4月から2015年2月までの11ヶ月分を払ったとあります。報道では、自己申告に基づいて全額支払ったと書かれています。

でもちょっと待って下さい。遡り支払いは過去2年分ではないのですか?!
2014年12月に発覚したのなら、2013年1月まで遡って未払い残業代を払わなくてはいけないのではないでしょうか?

それにしても、もし本当に自己申告にもとづいてサービス残業時間を計算したのなら、それはおかしいですよ。労働基準監督官に確かめてください。きっと、よろしくないと言うでしょう。なぜなら、従業員の労働時間管理は雇い主の義務だからです。
つまり会社(労働局)が全部調べて、サービス残業時間について、対象従業員の同意を得ることが必要です。それとも、当時サービス残業していた職員の皆さんは、2014年3月以前は全くサービス残業していなかったのですか?
タイムカードは少なくとも3年間は雇い主側に保存義務がありますから、調べられるはずです。

もう一つの疑問は、発表が遅いということです。1年前のことを今年になって発表しています。今から2014年3月以前(今から2年以上前の期間となる)の未払い残業代はほぼ請求できないからそのタイミングを狙ったのでしょうか?考えすぎ?

えるぼしは女性活躍企業認定マーク


国が認定する女性が活躍している企業への認定マーク、えるぼしが発表されました。
星1つから3つまでランクもあります。

「える」は、レディー(Lady)の頭文字をとったものだとのことですが、その他にもLabour(労動)とか、Lead(手本)の意味も込めているそうです。 認定された会社は、このマークを商品、名刺や、求人広告などに使えるので、今後目にすることがあるかもしれません。

 認定された会社はどのようなことができているのかというと、5つの項目があるのですが、例えば、採用時の競争倍率が、男女でほぼ同等であること。つまり女性だけ狭き門となっていないこととか、女性管理職の割合が産業ごとの平均値以上であることなどですが、一番大きなポイントは多様なキャリアコースとして、女性の正社員化の促進が入っていることだと思います。

 例えば、女性の非正社員から正社員への転換(派遣社員は雇入れ)というコースがあることや、過去に在籍した女性の正社員としての再雇用、概ね30歳以上の女性の正社員としての採用なども挙げられています。更にコースが有るだけでは認定されず、実績も出ていなければならないということになっています。

えるぼし認定企業のリストではありませんが、女性の活躍。両立支援企業のリストが女性の活躍推進企業データベースに出ています。

  こうした認定マークはくるみんが有名ですが、えるぼしはどうでしょうか?
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