秋田書店、不正告発した女性を解雇、に思うこと

コラム,解雇 — 2015年6月25日5:53 PM
新聞やテレビ番組から報道されているこの事件については、私も非常に高い関心を持っています。
特に労災絡みの病気休職中の解雇ということについてです。

この女性社員は、4年以上の間、問題の漫画雑誌の懸賞を担当していて、当選者の水増し発表について、上司に是正を訴えていたにもかかわらず、続けるよう指示されていたといいます。その後睡眠障害や適応障害を発症して、2011年9月から休職しているとのことです。

女性社員側は、解雇が不当であるとして、提訴すると報じられているので、真相は裁判で明らかになってくると思います。

ところで、この事件について、女性社員が発症した病気と労災の関係について、考えてみたいと思います。

 


 
その病気が、仕事中に仕事が原因で発病した(業務起因性と業務遂行性)ということが、労働基準監督署で認められ、労災認定されたら、その病気の治療期間中と治ったあと30日間は、労働基準法の決まりで、会社は、解雇してはいけないからです。(労働基準法19条 解雇制限)
 
以下に、順を追って検討してみましょう。もし、類似のケースで困っている方が読んでいらっしゃったら、是非参考にしてみてください。
 
① この女性社員の病気は労災認定されないのか?

報道では睡眠障害や適応障害となっているので、労災認定される対象の病気(主に、ICD-10の分類でF3やF4に該当する病気)かどうかは明確ではありませんが、もし、対象の病気であるとしたら、発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められるということになれば、精神障害の労災として認定される可能性があります。
 
② なにが業務による強い心理的負荷に当たるか?

この事件では、当選者の水増し発表という行為を上司から命令されて、行わざるを得なかった状況が当てはまると思います。さらにご本人は、是正を訴えていたとのことですから、違法なことをさせる業務命令に反対していたが、やむなくさせられていたということです。そして、会社は、監督官庁である、消費者庁から景品表示法違反として措置命令を受けていますから、違法行為であることは明白です。
 
③労災認定される基準に該当するか?

このことは、精神障害の労災認定基準に決められている、「業務に関連し、違法行為を強要された」という出来事に相当します。そして、その心理的負荷が」となる場合として、「業務に関連し、反対したにもかかわらず、違法行為を執拗に命じられ、やむなくそれに従った」場合が例としてあげられていますので、報道されている内容がすべて真実であれば、これに該当します。
そうすると、認定基準により、「強」と判定されるような出来事があって、労災の対象となる病気を発症していれば、労災認定される可能性があるという結論になります。
私が、「労災認定されます。」と断言できないのは、認定はあくまでも労働基準監督署が判定する事項であるからです。ご了承ください。
 
何れにしても、精神疾患により、2011年9月から、ほぼ2年近くも休職している方が、会社を懲戒解雇されただけでも大きなショックであると思いますし、これから裁判が始まるとすれば、もっと大きなストレスがかかってしまいます。病気がさらに悪化してしまうことが大変懸念されます。一日も早く、この事件が解決されることを願っています。
 
精神障害の労災認定基準についてはこちらのサイトを御覧ください。
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http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-15.pdf

 
労災認定基準は、平成23年12月に制定されていますが、それ以前に発症した精神疾患についても適用されます。