懲戒解雇と解雇予告手当-2

コラム — タグ: — 2015年7月25日3:19 PM

労働基準監督署への申立は、「私の代わりに解雇予告手当をもらってきて下さい」という事はできないのですが、その代わり、「会社がこのような法律違反をしているので、申告します」という言い方で申立書を書きます。今回のケースで言えば、「解雇予告手当を払わないという、労働基準法20条に違反する行為があった。」ということを書けばよいわけです。

でも、これだけでは十分ではありません。

まず第一に、自分はその会社に社員として雇用されていたことを証明しなければなりません。もちろん契約社員でもパートタイマーでの、嘱託社員でも良いです。解雇された会社から給料をもらっていたということが大事なポイントです。
そんなわかりきったことを何でいちいち言わなきゃならないのか、と思われるかも知れませんが、労基署はあくまでも第三者ですし、職権で、会社に対して解雇予告手当を払いなさいと命令するわけですから、そのための必要な事実を確認しなくてはならないのです。

川崎さんの場合は、会社から雇用通知書をもらっていませんでしたので、雇われているという証明としては給与明細書しかありませんでした。

この会社は採用した社員に対して、書面で労働条件を提示しなければならないという労基法15条の規定を守っていなかったことになるので、これも申告の内容としました。特にこの違反があったからといって、解雇予告手当が増額されるということはありませんが、労基署に対しては、法律違反行為の申告なので、これも申告の中に入れておきます。

ただ、川崎さんの場合、その会社の求人票の裏に、面接の日付、採用の日付、初任給、勤務時間などが、手書きで書かれていましたので、それも、採用されたことの証明として提出しました。実はこれが大変役に立ちました。

次に、自分が、いついつ解雇されたことを証明します。
普通は、解雇予告通知書、解雇通知書などが発行されて、その書類に解雇の日にちと解雇の理由が書かれているのですが、発行しない会社もたくさんあります。この場合は、会社に対して退職証明書を発行するように請求することができます。解雇理由も書くように要求できます。労働基準法22条では、会社に対して請求があれば発行しなさいと義務づけていますから、会社は、拒否できないことになります。

川崎さんの場合も解雇通知書は渡されていませんでしたので、内容証明郵便を使って、請求することにしました。特に今回は懲戒解雇という、最も重い処分をされたのですから、懲戒の事由についても明らかにするように要求しました。

三番目は、解雇予告手当の額はいくらなのかを、申し立てます。
これは労働基準法20条で計算方法が決まっていて、即日解雇の場合は、平均賃金の30日分以上を払うことになっています。平均賃金は労基法12条で、計算方法が決まっていて、端的に言ってしまうと、解雇されたときからさかのぼって3ヶ月間に払われた賃金を、歴日数で割ったものとなっています。たとえば、3ヶ月間に払われた賃金総額が92万円で、その3ヶ月間は92日(土日も含む)だったとすれば、平均賃金は1万円となります。

次に、残業代の計算をします。タイムカードのコピーはさすがに川崎さんも持っていなかったのですが、手帳に毎日の作業開始と終了時刻が書いてありました。現場主任としては当然のことなのだそうですが、これを元に1日ごとに残業時間を、算出し、月単位で集計します。

また、、週休2日制だったので、土曜日出勤があった日は、全労働時間が残業時間となりますので、これも計算に入れました。実際にはあまり残業時間は大きくはなりませんでしたが、残業代未払いは労基法上は賃金不払いですから、そのこと自体が法律違反なので、金額の多寡にかかわらず申告します。

川崎さんの場合は、給与明細書を全部持っていたので、計算はとても楽でしたし、計算根拠として示すことができるので、重要な証拠となります。



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