労災保険を使わないと、労災扱いとはならないのですか?

仕事中に仕事が原因(業務起因性)でケガをしたり、病気になったりしたことを業務災害と呼びます。この時に、治療費や、休業中の所得補填などの補償をしてくれるのが労災保険です。

労災保険はあくまでも保険給付ですから、別のところから類似の給付をもらっても構わないのです。(この時には労災保険からは給付は受けられません)
例えば、勤務時間中に社用車で客先へ移動中に事故にあった場合に、相手の自動車保険から補償が受けられるときにそれを選択して、労災給付はもらわないということでも構いません。

ところが、業務災害は、労災保険から給付を受けなくても、仕事中に仕事が原因でケガ、病気になったことが明らかであれば成立します。もちろん、労災から給付を受ければ、業務災害と認定されたということですからその意味では、労災給付をもらっていれば業務災害ということができるでしょう。(業務災害とは別に通勤災害という、会社と家との往復の途中でケガや病気になったことを指すものもあります)

ところで、労災給付をもらっていないから労災扱いとはならないとは一体どのような意味のことを言っているのでしょうか?

おそらく、その意味の一つに、会社が解雇できるかどうかということがあるのでしょう。
労働基準法19条には、『使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間(中略)は、解雇してはならない。』と決めています。これを労災給付をもらっていないなら、業務災害ではないから、解雇しても良いと、会社が誤解している危険性があります。

良くあるパターンが、自分が業務災害によって会社を休んで、労災以外のところから治療費や休業補償をしてもらっている間に会社が新しい人を雇ってしまい、自分は解雇されてしまったというようなケースです。上に書きましたとおり、業務災害の治療期間中と治療が終わったあと30日間は解雇できないので、この解雇は無効となります。

尚、会社は業務災害が発生した場合には、労災給付のあるなしにかかわらず、労働者死傷病報告書(4日以上の休業の場合と、4日未満の休業の場合の2種類あり)を労働基準監督署に提出する義務があります。これを怠ると50万円以下の罰金に処せられることがあります。(いわゆる労災かくしと呼ばれています)