トイレタイムは休憩時間ではない

コラム — 2016年3月25日10:03 AM
就業時間中にトイレに行っている時間は休憩時間だから給料をカットする。
今どき、こんなことをする会社はないでしょうが、最近は、ブログなどで、このようなことを言っている人も目につきます。

私は、そもそも前提が間違っていると思います。

労働時間というのは、働く人が、会社の(使用者)指揮監督の下にある時間を指すとなっています。(労働法コンメンタール上399ページ)
つまり、会社が決めている就業時間中は会社(上司)から命令を受けてその通りに仕事をしていれば、たとえ見た目には、何もしていないような時間があっても労働時間です。労働時間ですから当然、給料が払われます。

たとえば、小売店で朝10時から午後7時まで(休憩1時間)店番をしていたとします。会社からは、お客様いらっしゃらないときでも、店内で待機しているように言われています。逆に言えば、お客様が来店したら、すぐに接客ができるように、体も意識も準備した状態を保ち続けているわけですから、労働から開放された時間ではありません。いわゆる手待ち時間と呼ばれるこの時間は労働時間ですから給料カットはできません。

逆に、昼休みでも、上司から電話番をするように言われていて、「休み時間だから何をしていてもいいけど、机から離れないで電話が来たら応対するように」指示されていたら、この時間は休憩時間ではなく労働時間です。考え方は店番と同じです。ですから、昼休みを早番・遅番の2通りにして、誰かが会社にいて昼前後にかかってくる電話を取るようにしている会社もあります。また、労使協定(会社と社員代表との間で約束すること)があれば、休憩時間をずらして取ることは違反ではありません。(一斉休憩の例外)

ではトイレに行っている時間はどうなのでしょうか?トイレや水分補給のための飲水などは生理現象ですし、これを認めないと健康にも悪影響を及ぼしますから、普通は、就業時間中でもそのために席を立って職場を離れることは認められています。製造工程のラインに入っている人は、作業時間中は抜けられないので、休憩時間の回数が事務職よりも多くとってあります。たとえば、昼休みのほかに10時、3時、4時にそれぞれ5~10分などです。

事務職の場合には、トイレ休憩といった休憩時間は特に設定されていないことの方が多いと思いますが、用が済めばすぐに席に戻って仕事を続けるわけですから(そのように指示されているわけですから)、会社の指揮監督下にある時間となります。そうすると労働時間です。賃金カットをしたら労基法24条違反です。

休憩時間というのは、実質的に労働から解放され自由に利用することが保障されている時間を指すとなっています(前掲コンメンタール458ページ)したがって、休憩時間は会社で時刻や時間数を決めています。具体的には雇用契約書や就業規則に書かれています。たとえば、「休憩時間は正午から午後1時00分までの1時間」といった具合です。この時間中は何をしていてもかまいません。会社からの指示命令もありません。ただし、外出する場合には許可が必要といったことはあってもよいことになっています。

このように労働時間や休憩時間は、しっかりと定義されていますから、ブログに惑わされず、もう一度よく理解してください。

就業時間中の喫煙時間は、判断が分かれるところですが、喫煙中でも電話応対(館内PHSや携帯電話など)ができる状態だったりすれば、会社の指揮監督下にあるとして休憩時間とは見なされないでしょう。でも、健康管理のために、まず禁煙してください。