あっせんは和解が前提

あっせんで解決,トラブル解決法 — タグ: — 2015年10月23日6:35 PM

あっせんというのは、和解のあっせんを仲立ちしてくれるという仕組みのことです。ですから、トラブルになってしまった当事者(たいていの場合、社員と会社)の両方が、和解をすることを条件として、あっせんが開始されるということなのです。

もし、会社が、和解には応じるつもりはないと決めてしまえば、不参加、つまり、あっせんに出てくる必要もないということになってしまうので、あっせん不調となります。このような事にならないよう、特定社労士があっせん代理人をお引き受けしたときには、相手方(たいていの場合には会社)と直接話をして、あっせんに出ていただけるように説得することができます。

ここが労働審判や簡易裁判所への訴訟提起と大きく違うところで、あっせんでは、相手方を強制的に交渉のテーブルに着かせることは考えられていません。
でも、見方によっては、お互いに和解することを前提として話し合いをすることに合意して、あっせん委員という仲介者を間に挟んで交渉するのですから、落としどころが決まれば、結構スムーズに事は運びます。
和解した後は約束したことを実行するだけなので、トラブル解決は確実性がとても高く、しかも短期間で解決できます。約束したのにあとから、やっぱりやめたとか、なかなか実行してくれないといったことはあまりありません。(全くないわけではありませんが、これは裁判でも同じです)

でも、相手方があっせんに出てこなくても、他にいくらでも解決の方法はあります。
簡易裁判所への提訴、労働審判への申立等、個人が申し立てることについての敷居がどんどん低くなっています。そして、トラブル解決の件数が毎年増大しています。
つまり、それだけこの紛争解決手段が多用されていて、しかも効果が上がっているということです。
裏返せば、それだけ労使トラブルが、社内で(あるいは当事者間で)解決できずに、表に出てきてしまって、裁判所や公的機関等の行政サービスを使って解決されているということです。

ところで、会社があっせんに参加しないことのメリットは何でしょうか?
申し立てた側が、あっせん不調によって、あきらめてしまうことを期待しているのでしょうか?
あるいは、相手方として、トラブルは起きていないということを主張したいのでしょうか?
よくあるケースが、パワハラです。「うちの会社ではパワハラは、ない。」とか、「これがパワハラに当たるはずがない。」などと言って、「あっせんに参加したらパワハラがあったことを認めてしまうから、不参加。」と決めてしまう会社が多いのです。

でも、裁判に持ち込まれたら、どのみち出て行かなければならないし、そこでは、パワハラがなかったことを自分たちで証明しなければならないわけですから、あっせんに参加して早く解決した方がよいと思うのですが、経営者はなかなかそのようには考えないようです。

私が考えるには、会社があっせんを申し立てられて、不参加とすることのメリットは何もないと思います。
むしろデメリットばかりです。

労働者側があっせんを申し立てる時というのは、本当に腹の底から怒っている時で、トラブルの解決に対して、非常に強い意志を持っています。(ここでは自分に有利になるような解決という意味) ただし、公になることは避けたいし、できれば短時間のうちに解決したいという気持ちも持っています。裁判になれば、時間も費用も(弁護士さんに代理人をお願いすれば十万円単位の大金がかかります)かかるので、できれば費用は抑えたいが、相手が不誠実な態度で臨むなら最終的には裁判で争っても構わないというくらいの気持ちでいる事が多いです。(私が今までにご相談を受けた方々は皆さんそうでした。)

ですから、あっせんの申し立ては第1ステップに過ぎないのです。あっせんがダメなら次は労働審判、簡易裁判所というように、次から次へと手を打って行くことができます。労使トラブルの中でも未払い残業代や、解雇の問題は比較的取り組み易いテーマなので、弁護士さんの支援を得なくても本人だけで申し立てることができてしまいます。簡易裁判所には申立書のひな型があるくらいです。もちろん弁護士に代理人を頼んだり、労働基準法・労働契約法や関連諸法令に強い特定社会保険労務士の支援を得た方がより良いことは明らかです。

あっせんで解決できれば、和解が成立することで、申立側、相手方双方にとって納得感を得られますし、短時間で解決が可能ですから、こうしたメリットは生かすべきだと思います。
特定社労士がお手伝いしますので、お困りの時は是非ご相談ください。