2016年7月23日

突っ込みどころ満載の労災裁判-1

 平成28年3月16日に東京地裁で出た労災死亡事故に関連して会社が被告となった裁判の判決文を読んでいます。この裁判は、チョコレート製造販売会社で直販店の店舗管理、在庫管理などを担当していた若手社員が、過重労働によりうつ病にかかり平成23年12月28日に自殺してしまったことについて、会社の責任を争った裁判でした。死亡直前2ヵ月の残業時間は172時間と186時間でした。この会社の所定労働時間は162時間ということですから、この2ヵ月間は、2倍働いていたことになります。それ以前も100時間を越える残業をしていたとのことです。まことに痛ましい事件です。
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コラム — タグ: — 6:49 PM
2016年5月23日

ウチはみなし労働時間制

みなし

「ウチの会社はみなし労働時間制だから残業代はないよ」
といわれて、そうなのか、と納得させられてしまった、といったことありませんでしたか?

「みなし」が何を指すのかにもよりますが、もしこれが「事業場外労働に関するみなし労働時間制」のことだとしたら、自分はこれに当てはまるのかよく確認する必要があります。

実は労働基準法38条の2で、社外(事業場外のこと)で働いていて、上司や会社が労働時間を正確にわからないという場合には、一定時間働いたことにしても良いと決めています。ただし、これは昔の通信環境や労働時間管理での働き方を想定していますから、現在ではこの説明だけでは不十分です。
今から30年ほど前までは、安価で手軽に使える携帯電話もなく、外出した社員と連絡を取りたいときにはポケベル(知らない方も多いでしょうが、会社に電話をするように知らせるショートメールのようなもの)程度しかなかった時代には、社員が、外出して会社に戻らずに帰宅してしまうと何時まで働いたのか確認が取れないということがありました。自己申告をそのまま鵜呑みにするわけにも行かなかったようです。
特に、外回りの営業職や修理補修担当の方々は、朝会社に来て前日のことを報告したら、また、外出してそのまま帰宅するということが頻繁に行われていました。
こうしたときに、会社としては何時まで働いていたのか客観的な資料による確認ができないので、外出先から早く家に帰ったときも、遅くまで働いたときも、1日8時間働いたことにして給料の計算をしても良いということになっているのです。普段の仕事の量から見て、この業務なら1日10時間かかるとすれば、その通りに1日10時間(つまり毎日残業2時間したとみなす)と決めても良いのです。

つまり、1日8時間働いたと「みなし」て給料を払うというシステムです。もし10時間と「みなし」たら、1日2時間分の残業代も払われます。
この法律は今でも有効ですが、携帯電話が大変に普及している現代では、会社から外出中の社員に連絡は随時できますし、外出先で携帯端末からグループウエアに終業時刻を入力させることもできますから、何時まで働いたのかの確認は簡単にできます。そうした意味ではこの「事業場外労働のみなし労働時間制」が当てはまるケースは、海外旅行のツアーコンダクター、在宅勤務などの特殊な場合しかありません。一般的な働き方で、社外で仕事をしたとしても事業場外のみなし労働に当てはまるケースはごくまれだといえます。

「みなし」とならない場合には、もっとローテクな状況もあります。
たとえば、課長と部下である自分とで外回りの営業に行った。課長とともに夜9時まで働いて、直帰した。
このような場合には、労働時間を管理することができる上司が最後まで一緒にいたので、夜9時までが労働時間なりますから、「みなし」にはなりません。
あるいは、外出先から会社に戻って仕事をしてから帰る場合には、行きは直行したとしてもみなし労働は当てはまりません。通常は、始業時刻から退社時刻までがその日の労働時間となります。

あくまでも事業場外ですから、内勤の社員には絶対に当てはまりません。
コラム — タグ: , — 6:20 PM
2016年5月18日

休業手当と休業補償は違います

休業手当と休業補償は混同されがちですが、違うものです。
何が違うかというと、その支払いの原因となった出来事です。
休業手当は、会社の都合で(帰責事由)会社が休みになって、社員が働く意思があっても働くことができなかったときは、会社は平均賃金の6割以上をその社員に払うというものです。これは労働基準法26条で決まっていて、会社に対して強制していますから、もし払わなければ、30万円以下の罰金が科せられます。(労基法120条1項)ただし、所定の出勤日が対象となりますので、所定休日(公休日)については支給の対象外です。
以前のブログでも、昨今世の中を騒がせている自動車の工場が一部休業するので一時帰休対象の社員には休業手当を払うことで組合と交渉中とお伝えしています。

休業補償は、労災がらみで出てくる言葉です。
こちらは労働基準法76条で決まっていて、業務災害によるけがや病気の治療のために働くことができなかった日について、会社が平均賃金の6割を補償する義務があるという決まりです。6割以上ではなく6割と決まっているところも休業手当とは違う点です。この休業補償は、労務不能の日で給料が出ない日(いわゆる欠勤日)が支給対象ですから、会社の所定休日でも支給されます。

業務災害というのは、仕事中に仕事が原因でケガしたり病気にかかった、ということです。これと対になる言葉として通勤災害がありますがこちらは通勤途中でケガしたり病気になったことを指します。

普通、会社は労災保険に入っていますから、治療費や所得補償などの給付は労災から出るので会社の持ち出しはなさそうですが、社員が欠勤した最初の3日間分は、労災保険から休業補償給付が出ないので、会社が休業補償を払わなければならないのです。こちらは違反すると6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。(労基法119条)

6割では足りないというときは、休業補償を受けないで、有給休暇を取ることもできます。

万一、会社が労災保険に入っていないときで、「うちの会社は労災に入っていないから、健康保険で直して」などと言われても、健康保険は使えません。この場合には、ケガや病気が治るまでは、会社が治療費も、休業補償も全額払うことになります。(労働基準法第8章災害補償)

労災保険は民間の損害保険と違って、労災事故が起きた後からでも加入できますので、会社に「今からでもいいから労災保険に入って、私が補償を受けられるようにしてほしい。」と言って構いません。会社も治療費など全額を負担することを考えたら、事故が起きたあとからでも入れるなら労災保険に入ったほうが絶対よいはずです。

労災事故に用けがや病気に対しては労災保険が手厚い補償をしてはくれますが、結局はかかった費用の実費を補填してくれるだけです。痛かったり苦しかったりしたときの苦痛に対する補償はしてくれません。また、大きなけがや重篤な病気の場合には復職できるかどうかも不安です。労災事故に遭わないように普段から安全衛生には十分気をつけて、事故に遭わないように注意しましょう。
コラム — タグ: — 3:15 PM
2016年5月11日

パートタイマーの社会保険加入

今年(H28)10月から、パートタイマー(短時間労働者)の社会保険加入の基準が広がります。
今まで社会保険に入っていなかった方でも、10月以降は社会保険に加入することになるかもしれません。

では、誰が加入して誰が加入しないのでしょうか?その基準は何か?
以下にご説明します。
社会保険に加入することになる人は下の条件を全部満たす人です。:
1. 1週間に20時間以上働く
2. 月給が88,000円以上(年収なら106万円以上)ある
3. 1年以上その会社で働く見込みがある
4. 学生ではない
5. 会社が従業員501人以上の規模である
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コラム — タグ: — 9:52 AM
2016年4月22日

審査請求は3ヵ月以内に、に変わりました

労災事故という言葉は聞いたことがあるかもしれません。仕事中に仕事が原因でけがや病気になったときには、健康保険ではなく労災保険から、治療費が出たり、治療のために会社を休んで給料が出ないときに収入の補填がなされます。ところが、たまに、労災に認定されなかったということが起きます。

このような場合には、もう一度申請の中身をよく検討してもらい、給付を出してほしいという趣旨の不服申し立てをすることができます。雇用保険についても不服申し立て制度はあります。厚生労働省が配布しているパンフに、下の図のような図解が載っていますので参考にして下さい。雇用保険も労災保険も基本的には手続きの流れは同じです。

雇用保険審査請求は3ヵ月以内に_2

今年(H28年)4月1日以降の日付で発行された、労災給付の不支給や障害等級決定通知その他の処分に対する不服申し立て(労働保険審査請求など)は、その行政処分(たとえば、療養補償給付の不支給の決定)を知ったときから3ヵ月以内にすることに変更されました。これは、50年ぶりに改正された行政不服審査法に基づくものです。この改正によって、年金や健康保険関係は、審査請求で認められなかったときは、そこから半年以内なら裁判を起こすことも可能になりました。(今までは再審査請求までやって、その裁決が出なければ裁判を起こすことができませんでした。)

国を相手に裁判で争うのは本当に大変ですが、再審査請求の裁決まで待てないなどの事情がある場合には、この改正法によって、今までよりも早く裁判を起こすことができるようになりました。
ともかく、審査請求(1回目の不服申し立て)は今までは、不支給などを知ったとき60日以内でしたから、約1ヵ月間、申立期間が延長になりました。これは申請者側にとっては今までと比べたら、不服申し立ての準備期間が長くとれるようになりますから、制度が改善されたとことになります。

でも、申請が遅れればそれだけ結果も遅くなるので、書類がそろったと思ったら、すみやかに提出しましょう。たとえば、第三者の証言とか、医師の意見書とか、入手に時間がかかるような追加資料は申立書提出後でも出すことができます。

審査請求の申立書を送る方法で、私がおすすめするのは、レターパックによる郵送です。封筒を前もって買っておけば、書類を入れてポストに入れるだけ。4Kgまで送ることができるので、書類なら相当の量を送ることができます。書類以外でも荷物も送ることができます。
土日でも投函できますし、バーコード付きのレシートをはがして持っていれば、その番号で調べれば、いつ相手方に届いたかもインターネット上でわかります。

郵送なら、消印の日付が3ヵ月以内に入っていれば、期限内に申し立てしたことなりますから、期限の日が土日で郵便局が閉まっているときなどはレターパックで発送できるのは強みです。私は、このレターパックの宛名書き面のコピーを保管しておくようにしています。
コラム — タグ: — 11:58 AM
2016年4月13日

求人票と違う契約内容

求人票と違うぞ2

ハローワークで見た求人票の内容と違う契約内容で採用された。これって、わりとよくあります。
求人票はあくまでも広告なので、実際に採用されるときは個別の労働契約を結ぶことになるので、多少の条件の違いはあるかもしれません。
それでもあまりに違うときは、求人票の発行元のハローワークに通告して下さい。

たとえば、ⅰ)求人票に書かれていた時給に比べて低い、ⅱ)隔週で土曜出勤がある、ⅲ)交通費を出してくれないなどさまざまことが求人票の内容と違うとか、大事なことなのに書かれていなかった、といったことがあるかと思います。

社会保険、労働保険ありとなっていて、自分は基準を満たしているのに加入させてくれないのは違法です。
よくあるのが、2ヵ月契約だから、何度更新しても社会保険には加入させないとか(本当は入社時または3ヵ月目からは加入しなければいけないはずです)、雇用保険は半年勤めたら入れる(本当は、入社時から加入させなければいけないはずです)、といったことが行われていますが、これも違法です。

ちなみに上で書いた求人票と違う3つの労働条件については、労働基準法には違反してはいません。でも、そうはいっても、求人票に書かれていることとあまりに違えば、広告で言えば、誇大広告、虚偽表示に該当するおそれもありますので、ハローワークでも、放置しておけないということで、通告するようにチラシまで作っています。下の方にありますので見て下さい。(民間の求人広告の発行元も同じだと思います)

通告するときの連絡先は、その求人票をもらったハローワークでもよいし、ハローワーク求人ホットライン 03-6858-8609へ電話しても良いです。こうしたことが起きたときのために、求人票は捨てないで持っていましょう。

ただ、ハローワークのチラシを見ていただけるとわかるように、「会社に対して是正指導を行います。」となっているだけなので、個別の労働契約の一つ一つについて「時給を〇〇円にしなさい」とか「交通費を出しなさい」とまでは言ってくれないようです。
ただ、会社もハローワークから是正指導を受けると言うことは、今後の助成金の申請要件にも響きかねないので、もし是正指導を受けたら、よほどの悪質な会社でない限り、その後は問題が起きないように注意を払って求人票を作成すると思います。求職する側にとってはより正確な内容の求人内容となるわけですから、ハローワークには是非頑張っていただきたいと思います。

今は、人手不足の業界が多くあり、何とか人を確保しようと、見栄えの良い求人広告を出している会社がたくさんありますが、中身はさまざまです。あまりにひどく内容が食い違う求人票についてはハローワークに通告することで、将来的に排除することができると思いますので、是非この制度を活用して下さい。

ところで、求人票と内容が違う労働条件ですでに入社してしまっているときはどうなるのでしょうか?
書面で労働条件が通知されている場合や、労働契約書に署名押印している場合には、契約した後から、求人票の内容と違うと言っても、さかのぼって条件を変えてもらうのは難しいかもしれません。
最低賃金未満の時給(基本給の時給換算も同じ)ならこれは違法ですから入社時にさかのぼって修正できますが、その他のことは労基法違反の事実がないと(たとえば、サービス残業させられている)、ハローワークがどこまでやってくれるかはわかりません。でもやはりここで大事になってくるのは求人票ですので、入社が決まっても捨てないで持っていましょう。

求人票と違うぞ
コラム — タグ: — 4:34 PM
2016年3月30日

介護休業はなぜ93日しかないの?

介護離職ゼロ政策を掲げている現政権ですが、法律上取ることができる介護休業は最大93日となっています。
また、雇用保険から支給される介護休業給付金も93日が上限です。会社がもっと長期間の休業を認めれば別ですが、そうでない場合には、会社の規定もMAXで93日の介護休業がとれることとなっていると思います。

実際の介護ではとても93日では終わらないから、現実的ではないと考える方がたくさんいます。

ところが、介護休業の本当の目的は、少し違うところにあります。

たとえば、自分の親が要介護状態となったと思われるときには、介護保険を使って、介護サービスを受けられるように手配をすることになるわけですが、この手配にはかなりの手間と時間がかかります。
親が住んでいるところにケアマネージャーに来てもらわなくてはならなかったり、手すりなどを付けてもらうための工事に立ち会わなければならなかったり、そういった意味で、会社を休まなければならないことが多くなるので、法律で介護休業の制度を作り、休みやすくするようにしたということなのです。

この93日の範囲内であれば、丸1日休まなくても短時間勤務に切り替えて働くこともできるし、介護休業とは別に、毎年5日まで(要介護者が2人以上の場合は10日まで)の介護休暇も取れるようになっています(1日ずつばらばらに取ることも可能)。

要介護の親が、日常的に介護サービスを受けられるようになれば、自分は会社を長期に休まなくても(あるいは辞めなくても)良くなるので、準備だけはよくしておきたいわけですから、この介護休業期間(給付金ももらえる)を活用することが期待されているのです。

介護休業を、親の介護をするための休業期間だと考えてしまうと、とても短くて足りないから会社を辞めざるを得ないとか、会社も、戻ってこられないなら休業しないですぐ辞めてほしいとかといった方向に話が行ってしまいます。
そうではなくて、そうならないために、介護サービスを受けられるように準備するための期間ということであれば、介護休業も申請しやすいのではないでしょうか?

今年4月1日から改正される雇用保険法では介護休業給付金も増えるということなので、介護離職を回避するためにも介護休業の趣旨を理解して活用してください。
コラム — タグ: — 5:36 PM
2016年3月25日

トイレタイムは休憩時間ではない

就業時間中にトイレに行っている時間は休憩時間だから給料をカットする。
今どき、こんなことをする会社はないでしょうが、最近は、ブログなどで、このようなことを言っている人も目につきます。

私は、そもそも前提が間違っていると思います。

労働時間というのは、働く人が、会社の(使用者)指揮監督の下にある時間を指すとなっています。(労働法コンメンタール上399ページ)
つまり、会社が決めている就業時間中は会社(上司)から命令を受けてその通りに仕事をしていれば、たとえ見た目には、何もしていないような時間があっても労働時間です。労働時間ですから当然、給料が払われます。

たとえば、小売店で朝10時から午後7時まで(休憩1時間)店番をしていたとします。会社からは、お客様いらっしゃらないときでも、店内で待機しているように言われています。逆に言えば、お客様が来店したら、すぐに接客ができるように、体も意識も準備した状態を保ち続けているわけですから、労働から開放された時間ではありません。いわゆる手待ち時間と呼ばれるこの時間は労働時間ですから給料カットはできません。

逆に、昼休みでも、上司から電話番をするように言われていて、「休み時間だから何をしていてもいいけど、机から離れないで電話が来たら応対するように」指示されていたら、この時間は休憩時間ではなく労働時間です。考え方は店番と同じです。ですから、昼休みを早番・遅番の2通りにして、誰かが会社にいて昼前後にかかってくる電話を取るようにしている会社もあります。また、労使協定(会社と社員代表との間で約束すること)があれば、休憩時間をずらして取ることは違反ではありません。(一斉休憩の例外)

ではトイレに行っている時間はどうなのでしょうか?トイレや水分補給のための飲水などは生理現象ですし、これを認めないと健康にも悪影響を及ぼしますから、普通は、就業時間中でもそのために席を立って職場を離れることは認められています。製造工程のラインに入っている人は、作業時間中は抜けられないので、休憩時間の回数が事務職よりも多くとってあります。たとえば、昼休みのほかに10時、3時、4時にそれぞれ5~10分などです。

事務職の場合には、トイレ休憩といった休憩時間は特に設定されていないことの方が多いと思いますが、用が済めばすぐに席に戻って仕事を続けるわけですから(そのように指示されているわけですから)、会社の指揮監督下にある時間となります。そうすると労働時間です。賃金カットをしたら労基法24条違反です。

休憩時間というのは、実質的に労働から解放され自由に利用することが保障されている時間を指すとなっています(前掲コンメンタール458ページ)したがって、休憩時間は会社で時刻や時間数を決めています。具体的には雇用契約書や就業規則に書かれています。たとえば、「休憩時間は正午から午後1時00分までの1時間」といった具合です。この時間中は何をしていてもかまいません。会社からの指示命令もありません。ただし、外出する場合には許可が必要といったことはあってもよいことになっています。

このように労働時間や休憩時間は、しっかりと定義されていますから、ブログに惑わされず、もう一度よく理解してください。

就業時間中の喫煙時間は、判断が分かれるところですが、喫煙中でも電話応対(館内PHSや携帯電話など)ができる状態だったりすれば、会社の指揮監督下にあるとして休憩時間とは見なされないでしょう。でも、健康管理のために、まず禁煙してください。

コラム — 10:03 AM
2016年3月23日

パートタイマーに通勤手当が出ないのは差別か?

正社員には通勤手当が出ているのに、パートには出ない。
こんなことがごく当たり前のように行われています。

 パートタイマーだって、電車やバスで通勤する時には費用がかかっているわけですから、毎日のことになれば、1ヵ月あたりで見れば、相当高額な金額になってしまいます。せっかく良さそうな求人を見つけても交通費が出ないなら別の求人探そうと考えてしまうことだってありますよね。

 なぜ、正社員とパートタイマーでは通勤費で差を付けてもよいのでしょうか?
差をつけてもよいというよりも、逆にパートタイム労働法によって正社員とパートタイマーは差別してはいけないはずでは?

 その通りなのですが、実は差別してはいけないパートタイマーがどのような働き方をする人なのかということについては、パート労働法9条で決まっているのです。
この決まり事に当てはまれば、強制的に差別禁止ですから通勤手当も払われなくてなりません。

パートタイム労働法9条の条文にはこのように書かれています。
事業主は、職務の内容、人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者である者については、パートタイム労働者であることを理由として、その待遇について、差別的取り扱いをしてはならない。

 このように、「~してはならない。」と書いてある条文は主語である事業主(会社)に義務を課していますから、差別的取り扱いをしたら法律違反です。これは、会社へのプレッシャーになります。(ただし、9条違反に対する罰則はありません。)

 これだけではわかりにくいので具体的に一つ一つ見ていきましょう。

1.職務の内容が正社員とパートタイマーで同じかどうか?
たとえば、小売店の販売職で比較してみましょう。
担当している主な仕事が同じかどうか?
パートタイマーは接客、レジ、品出し、清掃の担当ですが、正社員は、掃除はしませんが、接客、レジ、品出しのほかにクレーム処理や発注業務を担当しています。
この場合、接客、レジ、品出しの3つの仕事は、そのほかの仕事に比べたら、従事している時間や頻度も多く、店の運営に欠かせない中心的な仕事であるということなら、正社員とパートタイマーは実質的に同じ仕事をしていると判断します。

2.その次に、責任の程度が同じかどうかを見ます。
責任というのは漠然としていて判定が難しいですが、たとえば、クレームに対応するときの権限の範囲が正社員もパートタイマーもほぼ同じくらいなら、(ほかにもまだいくつかの要素がありますが)両者の間で責任について差はないと判断されます。

3.ここまでが第一段階で、これをクリアしたら、その次に、人材活用の仕組みや運用が同じかどうかを見ます。
これはお勤めの会社の人事制度がどうなっているかによって違いがはっきりしてくるので、雇用契約書や就業規則があれば、その内容で判断できます。
たとえば、正社員には転勤や配置転換があって、実際に転勤や人事異動があるが、パートタイマーには全くないという場合には、差別禁止のパート労働者には当てはまらないということになってしまいます。
でも、パートタイマーでも転勤があったり、人事異動で職場や仕事内容が変わったりすることがあれば、その会社の中では人材活用も同じと判定されて、差別取り扱いが禁止されるパートタイム労働者となります。
ここまで来れば、通勤手当も当然払われることになります。

 このように、差別的取り扱い禁止の対象となるパートタイマーになるには結構ハードルが高いのが実情です。
でも、これから同一値労働同一賃金の施策がもっと推し進められるようになれば、こちらのハードルも下がることが期待できます。
コラム — 6:28 PM
2016年3月22日

昨年度のサービス残業代142.5億円

厚生労働省が発表した資料では、H26年度(H26/4~H27/3)に、労働基準監督署の是正勧告・指導を受けてサービス残業代が払われたのは1、329社で金額にして142.5億円だったとなっています。
この数字は、1社で100万円以上のサービス残業代を払ったケースをまとめたものなので、100万円に満たない金額のサービス残業代も監督署の勧告・指導によって払われたと思いますが、ここの件数には入っていません。

H26年度とH25年度(H25/4~H26/3)の数字を比較するとどのようなことが見えてくるでしょうか?
       H25      H26
是正企業数: 1,417社   1,329社

さかのぼって  123億円   142億円
払われた残業代

対象労働者数: 11.5万人  20.3万人

1社あたりの: 871万円   1,072万円
サービス残業代

労働者一人の   11万円   7万円
サービス残業代

1社で払った: 4.5億円   14億円
最高額

こうしてみてみると、H26年度はH25年度に比べて社員数の多い(規模が大きい)会社が労基署による是正・指導を受けたのではないかと思われます。いわゆる「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)が東京都と大阪府に導入されたのはH27年度(H27年4月)ですから今年度はもっと金額が増えるかもしれません。

サービス残業が多かった業種は、製造業、商業、保健衛生業、建設業の順になっていて、この順番はH25年度も同じです。

労働基準監督署の是正・指導とは、どのようにして行われるのでしょうか?
労働者から労働基準監督署に対して、サービス残業させられていると申告することによって、監督官が会社に調査に行くというパターンが多いかと思います。 会社に事前の通知なしに、いきなり監督官が来ますので、会社はびっくりしますが、そうしないと証拠書類を隠してしまったり、破棄してしまったりするおそれがあるので、1回目は事前通告なしに調査に来ますが、職権乱用でも何でもありません。

サービス残業は労働基準法違反ですから、罰則もあります。会社と使用者(社長などの経営者)の両者が刑罰を受けるので、大変なことになります。

それよりも、過重労働によって、健康を害してしまったり、最悪の場合には命を落としてしまうこともあり(過労死や過労自殺など)、実際にこうした事件は頻発しています。労働基準監督署だけでなく、社会としてこうした悲劇をなくすためには、労基法違反をしている企業に、我々も目光らせていなければなりません。
その一つの方法が労基署へのサービス残業の申告です。口頭でもいいし、紙に書いて示してもよいのですが、できれば、勤務状況と給与明細書を示して残業していたことと、その残業代が払われていないことを証明しましょう。

それと、一番大事なことですが、長時間労働や過重労働はできるだけ避けて、健康を害さないように、自分を守りましょう。もしほかの人に迷惑がかかるからといって、自分ががんばればよいと思ってしまうような状況だったら、一人で抱え込まないで、助けを求めましょう。
コラム — タグ: — 10:13 AM
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