通勤手当に上限があり、全額出ないのはなぜ?

労務トラブルQ&A,給与問題 — 2015年6月25日10:10 AM

通勤手当は全額払って欲しいと思うのは誰でも同じ気持ちでしょう。求人票を見るときにも、通勤手当の支給がどうなっているかは、かなり関心が高い項目ですね。

ところが、労働基準法には、通勤手当を払いなさいとか、上限を設けてはいけないなどの決まりが全くありません。
会社が社員との約束で、(就業規則や賃金規定の中で)通勤手当を払うことにしたのなら、その取り決めに従って払いなさいといっているだけなのです。
逆に言えば、会社が通勤手当は払わないと決めてしまえば、労基法上はそれでいいことになっているのです。

世の中には通勤手当を全く払わないという会社もありますが、上記の通り違法ではありません。
また、例えば、毎月1万円を上限として、通勤定期代がそれ以上かかっても、1万円しか出さない会社もありますが、就業規則や賃金規定でそのように決めているなら、これも違法ではありません。

よくあるのは、通勤手当の非課税限度額(電車やバスなどの公共交通機関の場合は1ヵ月10万円まで)を会社が払う通勤手当の上限としていることなどです。1ヵ月に10万円を超えるような定期代がかかるような通勤の仕方(例えば、新幹線通勤)をしている人はあまりいないでしょうから、こんな上限があったとしても、ほとんどの人は通勤手当を全額非課税で支給してもらっていると思います。

自家用車やバイク・自転車で通勤する場合は、片道の通勤距離に応じて非課税限度額が決まっています。詳しくはタックスアンサーのページで確認して下さい。この場合片道2キロメートル以内の通勤距離の場合で通勤手当が支給されたら、全額が、課税対象となるということです。

では、通勤手当はもらっているが、会社はどのように決めているのかを知りたいときは、会社の就業規則や賃金規程で確認しましょう。役職手当や家族手当などと一緒に、どのような条件で払うかが書かれているはずです。そして、そこに書かれていることは社員との約束事なので、会社はその決まりに従わなくてはなりません。
労働基準法の世界(つまり働いている会社の中では)就業規則や賃金規定のほうが個別の労働契約よりも強いので、上のように、いくら労働契約で不利な条件を決めても、就業規則や賃金規定で決まっている内容に上書きされてしまうということなのです。個別の契約書の内容が就業規則よりも有利なら、契約書のほうが優先します。

例えば、賃金規程には「通勤手当は、1ヵ月10万円を上限として払う」と書かれているのに、通勤定期代が毎月1万円かかる自分が入社したときに、会社から「君には通勤手当を払わないからそのつもりで」といわれても、賃金規程の決まりの方が優先しますから、会社は払わなくてはいけません。

反対に、雇用契約書には通勤手当は全額支給すると書かれているのに、会社が「賃金規程で上限を1万円と決めているから君の場合は、定期代1万5千円だけど1万円しか払わないから、5千円は自分で足してね。」と言っても、個別の契約の方が有利な条件なので、この場合は個別契約が優先しますから1万5千円払ってもらえます。

反対に、例えば、バスの定期代をもらって、定期券や回数券を買わずに、徒歩や自転車で通勤したりしてはいけません。
この場合、会社から「通勤にバスを使っていないのなら、定期代を返せ」といわれても反論できません。法律も守ってくれません。

上で説明したように、通勤手当は、通勤の費用として払われるものとして税金がかからない(限度がありますが)のですから、他の目的に使ってしまってはいけませんね。