賃金立替払い制度ってなんですか?

労務トラブルQ&A,給与問題 — 2015年6月25日10:22 AM

この制度は、未払賃金立替払制度と言います。会社が倒産してしまった時に、給料が未払いのまま退職せざるを得なくなった社員に、会社に代わって、この制度から未払い分の一部が出るという制度です。

厚生労働省の発表によれば、平成24年度には、約175億円が4万人を超える人達に支払われたとのことです。一人あたり約43万円が払われたことになります。

倒産というのは、

  1. 会社が法律上の倒産(例えば、破産手続きなど)をした時と
  2. 中小企業の事実上の倒産、

という2つの種類があります。

中小企業の事実上の倒産とは、規模が小さい会社では、裁判所に届け出て手続きをしないで、会社事業の停止などのケースを言います。
社長が夜逃げしてしまい、社員だけが残されたなどという場合もこれに含まれます。

中小企業の範囲は以下のようになっています。
なお、会社は法人でなくても個人経営でも構いません。


中小企業の定義

資本金 社員数
一般企業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
小売業 5000万円以下 50人以下

給料は倒産する前から払われなくなっていることが多く、まず、給料の支払が遅れ、次に一部だけ払われるようになり、そのうち払われなくなってしまうというケースが多いかと思います。

そして、ある日会社がつぶれたを知り、払われていない給料があるまま、事実上の退職をせざるを得なくなります。

そのまま諦めてしまう人もいる一方で、会社を訴えることを考える人もいます。
しかしながら、社長が行方不明で捕まらなかったり、たとえ居場所を突き止めても、支払ってくれるだけのお金を持っていなかったりすれば、裁判で勝っても何も取れなないことになってしまいます。手続きの複雑さと裁判費用や裁判にかかる時間を考えたら、この立替払制度を使って少しでも取り戻したほうが、現実的だという考えもできるのではないでしょうか?

ただし、立替払制度で、支給される未払い賃金は、未払い分の全部ではありません。
会社が倒産した時から遡って6ヶ月間の未払い分の月給と退職金(会社に制度があることが条件)の総額の8割です。
中小企業の事実上の倒産の場合は、労働基準監督署に認定の申請をした日から遡って6ヶ月間の未払い給料が対象となります。
さらに、年令によって、立替えて払ってくれる金額の上限が決まっていて、30歳未満の方は総額で88万円、30歳~45歳未満なら176万円まで、45歳以上は296万円となっています。
残念ながら、ボーナスは対象となっていません。

では、事実上の倒産をどうやって証明するのかというと、その会社の住所の管轄の労働基準監督署に認定の申し立てをします。電話だけでは申請の受付をしてくれないと思いますので、直接労働基準監督署まで出向いてください。制度の制爪いや必要な書類を聞いておくことも大事なことです。社員証や給与明細書(古いものでも良い)を持って行くと良いでしょう。

特に、時給制や日給制で働いている場合には、未払い給料の計算をしなければならないので、タイムカードなどの出勤簿が必要になります。給料の遅配が始まったら、タイムカードや日報のコピーをとっておくか、出勤と勤務時間を証明できるような書類を手元に残しておきましょう。私がお手伝いしたケースでは、エステサロンで働く方たちでしたが、予約表に担当者の名前が書いてありましたので、これを出勤簿代わりに出して認められました。

最後に、給与明細書はどのような場合にも重要な証拠になりますから、必ずとっておきましょう。