産休中の社会保険料も免除になります

産休期間中も健康保険、厚生年金などの社会保険料が免除されます。
ポイントは、社員負担分だけでなく、会社負担分の保険料も免除されるということです。産休により会社を休んでいるときは、会社も保険料負担がないので、もはや、会社に迷惑がかかる、ということはありません。

免除期間中も、健康保険証は使えますし、厚生年金も保険料を払ったことになりますから、お得な制度です。免除された保険料分はみんなで分け合って負担しましょうという考えに基づくからです。

実は、これとよく似た制度で、育児休業期間中の社会保険料免除制度(社員負担+会社負担)があります。こちらは既に実施されていますし、会社負担の保険料も当初から免除されています。もちろん保険証も使えますし、厚生年金保険料も払ったことになります。こちらについても経営者にはあまりよく知られていません。

社員の方にとっては、会社負担の保険料が免除されることについてはあまり関心がないかも知れませんが、「マタハラ」等という言葉が全国組織の労働組合の委員長から発せられるほど、妊娠・出産に対する差別的な取扱が多く発生している現状では、会社に負担がかからない休業期間ということについても社員の皆さんにも知っていただきたいと思っています。

マタハラ(マタニティハラスメントのこと)という言葉を聞いたことがありますか?
セクハラやパワハラと並んで3大ハラスメントのひとつなんだそうです。

会社に迷惑がかかると言われたから辞めざるを得なかったとか、却ってきつい仕事をさせられ辞めざるを得なかった等の被害にあっている方は多いのではないでしょうか?
これが、産休中の社会保険料の免除という法律改正によって少しでも減らないだろうかと考えています。なぜかと言えば、社会保険料負担について経営者の誤解を解くことができれば、このようなハラスメントはいくらかでも防げるのではないかと期待しているからです。

もちろんマタニティハラスメントの原因が全て社会保険料負担のせいではなく、もっと根深いものがありますが、経営者は法定福利費のような、払うお金の事に一番敏感なので、ハラスメントの原因になりやすいからです。つまり会社がもうかるならお換えを払ってもいいけど、会社を長期に休んでいる人の分までなぜ会社が経費を負担しなければならないのか?という思考回路が働くのだと思います。

実は、社会保険料は社員と会社で50%ずつ負担するということになっていて、社員の給料から天引きされる社会保険料と同額以上の保険料を負担しています。

この会社負担の社会保険料は、おおよそですが、給与支払総額(税引き前)の15%前後にもなります。これは会社から見れば、給料に上乗せして払っている保険料ですから、産休・育休期間中とはいえ、休業中の社員についても会社負担の保険料を払わなければならないと考えていたら、負担感が強いのも無理はありません。でも、本当はこれがないのですから、社長や上司がそれを知れば、考えが変わる可能性は高いです。

実際に、私が社会保険関係の業務を請負っている会社の社長さんも、当初は、育休期間中の保険料免除についてご存じではなく、社員の育休取得に否定的だったのですが、保険料免除のことを申し上げたら、『それならいいよ』と言って、育休取得を認めてくれたことがあります。産休・育休は法律で守られた権利ですから、そんな言い方はないだろうとも思ってしまいますが、結果として育休を取って、その間、雇用保険から給付が出たのですから、結果オーライだと思っています。

話は飛びますが、そして変な言い方ですが、育休は取らなければ損です。 会社をやめてしまうと、雇用保険から出る育児休業基本給付金がストップしてしまいます。社会保険料免除も終わってしまいますから、雇用保険の基本手当(失業給付)をもらっている間は、夫が社会保険に加入している場合でも、扶養に入る事ができず、自分だけ国民健康保険と国民年金に加入して保険料を払わなくてなりません。保険料免除と給付がもらえることと比較したら、経済的な損失は甚大なものになります。今まで、保険料を払ってきたからこそ、給付が受けられるわけですから、辞めてしまっては、その権利を放棄することになりますので、結果的には損です。

そこで、産休期間中の社会保険料免除ですが、免除の対象となる月は、産休を開始した月から、産休が終了した月の前の月までです。保険料免除は月単位なので(日割り計算はしません)、月末に産休していれば免除と考えれば良いので、例えば、6月30日は産休期間中で、7月1日から職場復帰したとすれば、6月分までの保険料は免除されます。逆に6月25日に産休が終了すれば、月末は産休期間中ではないので、保険料免除は5月分までとなります。

産休の開始日と終了日は、それぞれ出産予定日と出産日によって決まってしまうので、当事者によって調整することができません。また、実際に休んでいてなおかつ無給であることが必要です。

では、平成26年4月よりも前から産休に入っている場合はどうなるのかといえば、4月分の保険料から免除されます。もし、平成26年4月30日まで産休したときは、月末時点で産休期間中なので4月分の保険料が免除されます(この場合は、元々3月分の保険料までは、免除対象ではないので、従来通り払うことになります)。

産休が明けても職場復帰せず、そのまま育休に入る場合は、実質的には、保険料免除がそのまま継続されますが、おそらく届出は改めて行うことになるでしょう。忘れないようにしたいものです。