東芝うつ病事件が確定しました

コラム — タグ: — 2016年9月16日4:14 PM
 仕事が原因でうつ病になり、会社の安全配慮義務違反を争った事件(通称「東芝うつ病事件」)の判決が確定しました。最高裁まで行き、差し戻しの高裁判決が8月31日に出て、労働者側のほぼ全面勝利でしたが、その後、会社が上告しなかったので、この高裁判決が確定したことになります。

 うつ病と闘いながら12年もの期間、裁判を続けてきた労働者(重光さん)には本当に良かったとともにお疲れ様でしたと申し上げたいです。なんと、ご本人はブログで職場復帰を目指すと言っているのです。私はその決意に敬意を表したいですし、微力ながら応援したいと思います。。

私もこの事件には大変関心があり、地裁判決から最高裁判決まで読んで、レポートをしたことがあります。そもそもこの事件のきっかけは、ボタンの掛け違いから始まったと思っています。

 東芝という、当時は日本(世界も)を代表するような立派な企業で、社員の健康管理にも大変行き届いた制度があったのですが、それを使いこなすべき上司やその他社員たちが、うまく運用することができず、その労働者の病気が悪化してしまったという事が分かります。上司も他社との新製品開発、発売競争に負けないためにはかなり無理な注文も部下に下さなければならないときがあることは分かりますし、新製品の生産立ち上げのときには突発的な事故が多発し、それこそ徹夜が何日も続いてやっとの事で発売にこぎ着けたなどと言うことはよく聞く話です。その上、次から次へと新製品開発計画が走って、会社のトップからはまだかまだかと追い立てられる、まさに戦場のような状態だったのではないかと想像します。

 が、それでも、周りがちょっと気をつけてあげれば、病気の早期発見あるいは悪化の防止ができたかもしれない不幸な事件だったと思います。私は判決文からそのように読み解きました。

 差し戻しの高裁判決はまだ読んでいないので、最高裁までの裁判文でみますと、この被災労働者がうつ病であることを上司に申告しなかったことが、会社の安全配慮義務を免除できるかという点が一番の重要ポイントとして争われたと思います。最高裁は、労働者からの申告がなくても、会社には労働者の健康に関する労働環境に十分は注意を払うべき義務(安全配慮義務)があると判断しましたので、上司が「うつ病と言ってくれなきゃこっちも分からないよ」と言っても会社の責任は免れないと言うことです。

 でも、これって、何も新しいことではないのです。労働基準監督署をはじめとする労働行政では、ずっと前から、「事業場における労働者の心の健康作りのための指針」の中で、1番大切なのは自分自身によるケア、2番目にラインによるケアといっているので、上司はいつも労働者の健康状態に注意を払っていなさいと指示しているわけです。

 東芝のこの工場(この部門では)残念ながら、ラインによるケアが十分ではなかったのかもしれません。それが、優秀な社員の長期職場離脱、12年間の裁判と損害賠償金として約6000万円という形で決着したわけですから、代償は大きかったと思います。