外資系企業の日本人社長は労働者か

外資系企業の子会社である日本法人の社長が解任された時、これは、労働者の解雇なのか、役員の解任なのか?

日本で、法律に基づいて設立され、登記もされている法人なら、その登記簿にも載っている代表取締役であれば、普通に考えれば、労働者ではありませんね。もちろん雇用保険にだって入れないし、労災の給付も受けられません。

しかしながら、日本法人とは言っても、実態は、本社の日本営業所程度の扱いでしかない場合があります。

社長といっても、ほとんどの決定権限は本社にあり、社員を雇うにしても、採用段階から給料まで、すべて本社の人事部長の承認を貰わなければならないということであれば、社長としての権限を全く与えられていないのと同じ事になります。そして、責任だけは一方的に取らされ、即クビ、ということがよくあるようです。

特に、当初は社員として採用されたが、その後、社長に抜擢されたということは、規模が小さい外資系企業ではよく起きることです。このようなケースでは、社長と言えども、本社から独立して会社経営を任されているということではなく(経営を委任されていない)、全て本社の指示に従うことを求められているという、日本の会社であれば、営業所長か部長クラスの方の職責とあまり変わらないことだってあるはずです。

このような場合に、例えば、営業不振だからという理由で、本社から一方的に社長解任、解雇されても、何も言えないのでしょうか?
一般社員であれば、労働基準法や労働契約法などの法律によって、労働者としての保護・救済を受けることも期待できるのに、仕事の実態は部長並みなのに、タイトルが社長というだけで、何も保護されないというのは、日本という法治国家にあって、アンバランスだということもできます。

では、労働者性をどうやって証明するのかといえば、裁判所のような司法機関に判定してもらうことになりますが、実態は労働者であるということを証明するのは、解雇された社長側になるので、以下の様な事実について証拠をもって証明することが必要です。

例えば、日本法人は、日本国内で営業活動するための器に過ぎず、実態は、営業所扱いであったことが証明できるような書類、社長の決定権はこれだけしかなかったという証明(例えば、支払い伝票にサインできるのは5万円以下の請求書のみ、といったこと)、当初採用された時の雇用契約書がまだ終了していないことの証明、支払われた報酬が社長としての職務に応じたものとはいえないほどの低額の報酬であったことの証明、予算管理の権限、社員の採用に関する権限、社員の給料、ボーナスの金額を決める権限、などなど。

こんなことは想像もしたくないでしょうが、いきなり本社から人事部の人が来て(あるいは弁護士が来て)、社長に解任を告げることだって起きています。そうなると、その時から社長室には二度と入れなくなり、解雇されれば、IDカードその他会社にアクセスできるものは全て取り上げられ、その場で会社から追い出されますから、その時なってからでは何も持ち出すことができません。

社長さんには、そのような心配をせずに、日々、業績拡大と社員の給料アップのために頑張っていただきたいですが、自分自身を守ることも忘れないでください。