懲戒解雇できますか?

コラム,解雇 — 2015年6月25日3:30 PM

秋田書店解雇事件をきっかけに懲戒解雇について考えてみます。

秋田書店を懲戒解雇された女性社員が、この懲戒解雇は不当であるとして、平成25年9月11日に、解雇無効と損害賠償を求めて東京地裁に提訴したということです。

懲戒解雇が有効か無効かは判決を待つことになりますが、ここでは、会社の規程としての懲戒解雇などの懲戒処分について、働く皆さんが知っておくべきことについて考えてみたいと思います。


懲戒解雇というのは、罰(ペナルティ)として会社が社員を解雇(クビ)にするということです。会社に勤めている者にとっては一番厳しい処分です。さらに、クビにされるだけでなく、場合によっては退職金がぜんぜん払われなかったり、即時解雇にもかかわらず解雇予告手当が払われなかったり、何よりも、この処分を受けた社員にとっては、大変不名誉なことですし、これ以降ずっとこの履歴を背負っていかねばならないのです。

ところで、国家機関でもなく、さらに社員の親でもない、単なる雇用契約の一方の当事者である会社が、もう一方の契約当事者である社員に罰を与えるということができるのでしょうか? 契約の当事者同士は対等の立場にあることが基本ですから、本来であれば、会社が社員を罰することはできないはずです。

法的根拠として考えてみると、労働基準法89条で、就業規則に書かなければならない項目について決めていて、第9項に、「(会社が*)表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」と書かれています。*筆者挿入
この条文を見たい方はこちら ⇓    ⇓     ⇓                          ⇓
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%98%4a%93%ad%8a%ee%8f%80%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S22HO049&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

また、労働契約法15条では、「使用者(会社*)が労働者を懲戒することが出来る場合において、~」と書かれていて、会社が懲戒処分をすることを想定しています。*筆者挿入

この条文を見たい方はこちら ⇓    ⇓     ⇓                          ⇓
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%98%4a%93%ad%8c%5f%96%f1%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H19HO128&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

つまり、法律で、会社は制裁(つまり懲戒処分)について決めても良いが、その場合には制裁の種類とその重さについて、就業規則に書きなさい、と決めているわけです。

具体的には、罰としての懲戒処分の種類や懲戒の対象となるような行為が、就業規則という社内規程にきちんと明文化されて、なおかつその規定が社員に周知されているということが必要です。なおかつ、懲戒処分を受ける前に、必ず、その社員の言い分を聞くということがされなければなりません。(弁明の機会を与えなければならないということ)
また、懲戒処分が行われるときは、その理由が明確に示されなければなりません。

例えば、似たようなケースとして交通違反の取り締まりを考えてみましょう。
駐車違反が取締まりの対称となるのは、法律がそれを決めていて、車を運転する人は駐車禁止の意味を知っています。そして、実際に駐車禁止の場所があって、その場所に駐禁の標識が出ていて、そこに車を止めた時に、何度か注意を受けても車を動かさない時に、違反切符を切られて初めて違反とされますよね

つまり、「問答無用で懲戒解雇だ!」というのはできないことになっているのです。

それでは会社は何を目的として、社員を懲戒処分するのでしょうか?

会社とは、たくさんの人が集まって、ある目的に向かって協働作業をしている組織であるということから、その組織運営を乱すような、ルール違反が行われては困るので、そのような行為に対しては、懲戒処分をして、社内秩序の維持を図ろうとするためだからです。

例えば、セクハラ行為は不法行為ですし、会社内でそのような行為をすれば、被害にあった社員だけでなく職場全体にも悪影響が及び結果として会社の営業成績の悪化につながることから、これを防止しなければなりません。
そのためには、就業規則に、そのような行為を例示した上で、違反行為をした社員に対して会社が懲戒処分をするということを予め決めておきますが。懲戒処分は、その決まりを根拠にしなければならないということです。

このように、懲戒処分をするときは会社には慎重な対応が求められていますし、さらに、処分が正当なものとするためには、客観的で合理的な理由が必要でなおかつ社会通念上の相当性があることが必要となっています。

もし、懲戒処分を受けても、その処分が理不尽だと思うような場合は、会社に対して、取り消してもらうように働きかけ、決着が付けばそれが一番よい方法ですが、解決できない時は、労働局のあっせんや労働審判、あるいは、裁判で、その処分の無効を訴えることになります。冒頭のケースでは、訴訟で懲戒解雇の無効を求めるということになっています。

普段まじめに働いていれば、懲戒処分を受けるようなことはないはずですが、万一そのような事態になってしまっても、問答無用はありえません。

この際、ぜひ就業規則を開いて、自社の懲戒の規程について確認しておいてください。